Phantom of the Office

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Side Tamamori







終業後、宮田に声をかけてご飯に行った。






「カンパーイ！」



「……かんぱい」






ご飯食べるはずが宮田が選んだのは普通に飲み屋で、

宮田があまりにも嬉しそうにジョッキを頼んだから俺も頼んだ。




カウンター席で、他にももう出来上がったサラリーマンたちがいっぱいいる。





まだ社会人３ヶ月の俺は、


自分がこの中にいることに違和感がある。





……だって俺は正当なサラリーマンじゃない。


曲がった仕事してる最低な奴なんだ。






嬉しそうな顔の宮田をちらっと見て、


心の中で「ごめん」って言った。






「暗っ！なんだよ今日暗くない？」



「お前と飲むのが嫌なだけ」



「おいおいおい急にそっちから誘っといて？またまた〜」





宮田にバシンと背中を叩かれながら、


こいつ本当にめげないなって思う。




俺だったらまだ出会って３ヶ月の同僚にこんなこと言われたら速攻で帰るのに、


宮田はひたすらポジティブに言葉を受け取ることができる。






しかもなんか妙にスーツが馴染んでて居酒屋にいても浮かないし変に明るいしなんなの。




……まぁそれがいいとこでもあるけど。







「ね、玉。聞いた？変な情報操作するやついるんだってさ〜うちの会社」





適当に宮田のバカみたいな話を聞き流してたら、


ちょっと聞き流せない単語が出てきてドキッとした。





「………」



「玉？具合悪い？」



「……あ、ううん。ちょっと喉詰まってただけ」






思わず何も相槌が打てなくなって、


多分顔もちょっと青くなったと思う。





……俺、なんで隠してるんだろう。


自分がファントムだってこと。






こんな情報操作係なんかが存在する状況を無くすために俺は働いてるのに。



なんで隠すんだ。





「そう？でさぁ、なんかこの前の総務課の吉田さんの賄賂のメールもさぁ。本人が誤送信したやつじゃなくてその情報操作でやられたって話」



「……そう」






……そうだよ。誤送信じゃないよ。


俺が、パソコンハックしてやったの。






「ひどい話だよねー。そんなの黙っとけばさぁ丸く話がまとまるのにね」



「……変にお前吉田さんに肩入れすんじゃん」



「俺お世話になったのこの前。だから悲しくて」






……ごめん、宮田。


俺、自分の保身のためにお前のこと傷付けたんだね。

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