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Side Tamamori
「……宮田?」
「なに、玉」
波の方に歩いていって振り返ると、
ちょっと離れたところにいた宮田。
やっぱりちょっと汗かいちゃって、暑そうにペットボトルの水を飲んでた。
「俺達さぁ」
「うん」
「………」
宮田の持ってるペットボトルの水が、光を反射してキラキラしてる。
そのキラキラした液体が宮田の喉に流れていくのが、まるでスローモーションみたいに見えた。
「俺達、さ」
「うん、」
……なんていうつもりなんだろう、
俺達さぁ、恋人みたいじゃない。
俺達さぁ、恋人どうしになれるんじゃない。
.
俺さぁ、お前のこと好きなんだけど。
.
きっとこいつは困った顔をして、今よりさらにダラッダラ汗かいて、
「え?え?いやいや」
みたいなことをそりゃもうアタフタしながら言うんだろうな。
……でもきっと宮田はオッケーしてくれる。
俺が自分を好きでいることを、許してくれる。
もしかしたら、宮田も俺のことを好きになってくれるかもしれない。
「玉?何?」
「………」
……でも言わない。
そもそもそこまで分かってるんならもう言う意味がない。
だって俺は、ファントムだから。
同じ会社で働いてる宮田のことを巻き込むわけにいかない。
汚れた俺みたいになってほしくない。
俺に宮田は相応しくない。
俺は大事なものなんか作っちゃいけない。
……そうやって自分をどんどん追い詰めて、
会社潰して、ユウトを大学に行かせて。
そしたらやっと俺は解放されるはずだ。
「俺のせいで」って思うことはきっとなくなるんだ。
「好きだよ、宮田」
「え?声小さすぎて聞こえないよ」
「…………」
でもそれまで一体何年かかる?
ちゃんと言えるまで、どのくらいの間頑張ればいい?
宮田だって自分の人生があるんだ。
「なんだよ、言えよ」
「うぅん……あっ」
「え!玉!大丈夫?」
足の裏にズキンと痛みが走る。
宮田が走って寄ってきて、痛みの元を探したら鋭いガラスが刺さってた。
……その痛みが、まるで俺の幸せにストップをかけたみたいに、
それからの俺は、ファントムの仕事で多忙を極めるようになった。
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ほか - 最新話まで一気に読ませていただきました(^^)りんごさんのペースでよいので是非この先を更新してほしいです!楽しみにしております! (2021年9月4日 21時) (レス) id: d8f5e0d33c (このIDを非表示/違反報告)
りんご(プロフ) - まほままさん» まだ読んでいただけたなんて!嬉しいです…本当にありがとうございます! (2020年10月3日 23時) (レス) id: b136585c56 (このIDを非表示/違反報告)
まほまま(プロフ) - りんごさん、更新ありがとうございます!ここは更新されるたびに楽しみに読ませて頂いています!この先…ミヤは裕太を守って欲しいですね。更新のんびりゆっくりお待ちしていますね。 (2020年9月11日 4時) (レス) id: 5fd2e2f33b (このIDを非表示/違反報告)
りんご(プロフ) - まほままさん» 返信してなくてごめんなさい、ありがとうございます! (2019年7月26日 18時) (レス) id: f95f9b47d8 (このIDを非表示/違反報告)
まほまま(プロフ) - りんごさんこんばんは。ちゃんと読んでいますよ!お待ちしてましたから。大丈夫です、私ものんびりしてますから〜。やっとみっくんから解放された玉ちゃん…みやっちとうまくいくといいんですが…。まったりとお待ちしてます。 (2019年1月17日 21時) (レス) id: de2262a235 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:りんご | 作成日時:2017年4月22日 18時