Phantom of the Office

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Side Miyata





自分ではどのくらいの時間が経過してたのかわかんないけど、


何分か、何十秒かして唇が離れたと思ったら、


玉はすーすーと寝息を立てながらパタンと後ろに崩れた。





「……マジか」





人生初の、キスしながら寝られる体験。


そんなことは普段すごく面白く感じるはずだけど、やっぱ今の俺は色々と感覚がおかしい。





……なんていうか、


思ったよりも玉がか弱くてかわいくて。




そんな玉が、なんでか理由は知らないけどこの俺を求めてた。




それがまたなんでかちょっと嬉しくて。


ふわふわの唇にもうちょっとだけ触れてたいなんて思ってる俺がいた。






玉はなんで俺にキスをしたんだろう。


寂しかった？


誰でもよかった？


家具が置けないのと関係してる？






「……家具はね、すぐ壊れちゃうの。壊れるところはもう見たくないから、置かないの」





さっきの玉の、小さな小さな声が蘇る。




あんなに頼りない玉は初めて見た。


なんかちっちゃな男の子みたいで、それが俺に甘えてくるみたいだった。



……守りたいって、


自然に思った。





……これは普通じゃない。


男友達に守りたいとか尋常ではない。






キスされて動揺が止まらないのは間違いない。





だって男だし、玉だし、何回も言うけど男だし、しかも相手は俺なんだよ？



ってか相手ってなんの相手？


恋愛？






「いやいやいやいや、いやいや」






首を振りながらとりあえず部屋を出た。


風呂場に干してあったスエットを２セット持って部屋に戻る。





このままじゃ皺になると思って玉のスーツを脱がせてやると、


二の腕に大きな火傷痕的なものが見えた。






……きっと何かあったんだね。


何か悲しい、痛いことが。





「……それで家がこんなに寂しい感じになっちゃったの？玉」


「………」






問いかけてみても玉は寝たまま反応しない。





何があったのかはわかんないけど、


俺がそれを癒せるのかも自信ないけど、


でも何か俺に出来ることがあったら、してあげたいよ。







玉が俺に求めてるものが、それがキスなんだったら、


俺は何回でもする。玉のためなら。









………そう思って寝たのに、


次の日玉は何も覚えていなかった。

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