声優オタクの声優さん ぱーと7

誰だあいつ ページ47

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「紀章さーん、顔怖いよ……」


「仕方ねぇだろ………、あんなの見て普通にしてろってのが無理」




そう言う紀章さんの視線の先にはAちゃんと失礼だけど名前もあんまり覚えてないくらいの若手の声優(男)。


最近ああやってAちゃんの隣を陣取って話している。
で、紀章さん的に話す分には全く問題ないらしいんだけど明らかに狙っている節があるとか。

気のせいじゃないの？と初めて聞いた時に言ったことがあるけど、絶対に違うと。


紀章さんがいないときに宮野くんと話したけれど、どうやら紀章さんの考えは当たっているみたいだ。


そもそも同期2人がいるときは2人が横を陣取るから話すことは無い。
麻里奈がいるときも同様に。


ああやって隣に座ってAちゃんと話すのは紀章さんがいるときだけ。実際に俺も見た。
紀章さんがいないとき、いない現場ではほとんど話しているのを見たことがない。つまりはそういうこと。


紀章さんとAちゃんは相当近しい役じゃないと隣に座らないから(例えば甘彼とか)、こうして離れて座ることの方が多い。

別に誰が隣に座ったっていいけど、旦那さんがいる前で、しかも謀ったかのように現場にいるときに見せつけるかのように話し込むのは確信犯でしかない。




「紀章さん、Aちゃんに話してないんですか？」


「………話してない。Aとしては相談に乗ってるだけなんだよ。そういう後輩多いから」


「なるほど話しずらいと」


「そう。でもあの子ああいうのにほんっとに疎いから心配っていうか。狙われてても気づかねぇし」


「あぁー………」




Aちゃんを見ると必然的に相手の男も目に入る。座り位置的にこちらからはAちゃんの背中が見えている状態だ。




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Aちゃんは足元に置いた自分の荷物を漁っている。

チラッと見えた相手の顔。
目線は紀章さんの方を向いていた。

口角は上がり、目元は怪しく歪んでいる。
そしてどうだと言わんばかりに笑みを浮かべていた。




「…………あいつ何処のだよ」


「賢プロ…………じゃないみたいですね」


「下野んとこの？」


「うちのじゃないです。………何処だったかな」


「事務所通して注意するしかねぇなあれ。完全に俺に喧嘩売ってる」


「直接言わないんですか？」


「ああいうのは直接言ったって聞かねぇよ。それに直接だと俺何するかわかんない」


「いやこっわ……」




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