日日是好日 2

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はたして鳴物入りでやってきた社長代理は、業界の事は本当に何も知らない素人のイケメン。しかも年下。


現場はみんな作業服が基本の職場なのにスタイリッシュにスーツを着て現れた彼は、終始笑顔を絶やさない人好きのしそうな優男だった。



そのどこぞの芸能人みたいなスタイルも、私のどストライクな顔面も、ふにゃっと笑う優しそうな雰囲気も、お近づきの印にと持参した女子受けしそうなお菓子までもが


この場においては、不釣り合い。




彼はさっそく社長がいない間自由にやれると思っていたらしい男性社員たちの目の敵にされた。


しかも社長は病床で彼に「困ったらAを頼れ」と言ったらしい。


今のところ、社長代理が困った顔をしていない日は1日もないし、「あ、あのぅ、Aさ〜ん」と情けない声で呼ばれるのはもはや私の一日のサイクルの中に組み込まれている。
数字の打ち込みの途中とかで来られると地味に業務妨害だからメールにしてください、と言ったら『お手振りして』とかいう意味の分からないメールを送ってくるし。


結果としてめんどくさい事情の年下の上司(仮)に頼られることになった私は、本来の仕事もできず、スタイリッシュにやる気満々で出社してくるのに、何にもわからないまま毎回タヌキみたいな顔でへこんで帰っていく社長代理を毎日補佐しなければならない。



お見舞いに伺った時、社長は私に「くれぐれも隆平を頼む」と遺言かと思うほど(失礼)念を押して頼んできたし、今の扱いからして彼を時期社長にしようと思っているのでは、という空気は会社にも取引先にも伝わっていたと思う。


それで、社内ではやっぱりぽっと出てきた社長代理への風当たりは強かった。


知識も技術もないのに口だけ上手なイケメンの社長代理は、残念ながらまだ誰にも認められていない。


そりゃそうだ、だって何したらいいかわからなくて社長室に籠っているだけだから。



“親のすねかじり” “社長が倒れたのをいいことにその座を狙うドラ息子”などなどの悪口は、たぶんどこかで彼自身の耳にも入っていると思う。







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