日日是好日 2

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ニコニコしたりがっかりしたり忙しく百面相をしていた社長代理は、今度は思案顔で私を見た。

そんな顔すらも完璧。


丸「僕、ここに座っとってなんか役に立つことあんのかなぁ…」


知識も技術も持ち合わせていない社長代理の目下の仕事は、仕事内容の確認と書類にハンコを押すこととあいさつ回りくらいなので、さすがに自分の存在意義について迷い始めているんだろうと思う。


「いつも言ってますけど」


「自分が役に立つことがないと思ってるうちは仕事はない」



明らかに落胆した様子の彼は、うなだれた顔をちょっと上げて言った。


丸「あの」

丸「お手振り、してくれませんか。頑張れるから」


「…仕事中なので」

それだけ言って急いで社長室を出る。



ドキドキしてちょっと厳しく言いすぎちゃった。

ほんとにやめてほしい。好みの顔にあんな風に誘われて断らなきゃいけないこっちの身にもなってくれ。

謎のお願いですらかわいいとか、何なのほんとに。

あの上目遣い。反則だろ。






現社長が倒れたのは、2週間ほど前の事だ。

社長の奥様から、命に別状はないし本人はピンピンしているけどしばらく検査入院になる、と連絡をもらって、それならそんなに長い期間ではないだろうし社長不在でも何とかなるだろう、と社員全員で胸をなでおろした。

でもその後に続く社長命令がくせもの。


社長が不在の間、代理として息子を会社に通わせる


社長の息子は海外で働いていて、今ちょうど長い長い夏休みを取って帰省しているところらしい。

それはいいけれど、息子は全然畑違いのIT系の会社で働いている人で、社員は誰も息子の顔も見たことがないのだから、息子だって会社を見たことがないはず。そんな人に社長代理で来てもらっても



かえってめんどくさいだけじゃない？


残念なことにその一言を社長に投げかけられるような社員は、うちにはいなかった。

うちの会社は技術系の零細企業で、社員が少ない分みんながいろんな仕事を兼務していて、経理担当の私が社長秘書みたいなことをしているのもその一つ。
私ともう一人の事務担当の倉子ちゃん以外は、全員男性の職場だ。しかもほぼほぼ技術職の職人気質の男ばっかり。

その社員たちから、社長に一言言えるとすれば社長の一番近くにいるお前だろう、という無言の視線を、私はこの数日浴び続けている。


無茶言うな、私だって自分の首は惜しい。







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