日日是好日 2

村上課長 ページ31

村上課長




横子が山形出張の補佐にAを推薦してきた時、俺はとっさに反対した。


想像したらムカついて胸がぎゅうっとなったから。


横子がメインで動く仕事が増えてかかえてる仕事を他に回すことになったので、取り急ぎ既に出張の予定が決まっている山形の取引先の補佐から引継ぎを決めることになった。

山形の会社はうちの取引先の中でもちょっと特殊で、遠方やから体力使うし毎回絶対泊まりがけになるし、そうなったら夜は飲みに誘われるはずで、いろんなリスクを汲み取ったらあそこは若い女に行かせられるところではない。

どんなとこかわかってるくせになんで男やなくてわざわざAを後任に推してきたんか理解に苦しむ。

「その方がうまくいきそうだから」ってなんやねん。

女の感？

あげく「ヒナは私のこと信じてないの？」ときた。

同期の腐れ縁で一緒に頑張ってきたお前の仕事は絶対的に信じてるけど、それとAの安否は別の話や。

しかも横子が仕事の場で俺を“ヒナ”って呼んでくる時はムキになった時かなんか隠し事してる時かいずれにせよええことない。



横「私も若い女で、ずっと補佐を務めてきたんですけど」

村「お前とAは違うやろ」

横「村上課長と大倉も違います」



山形のメイン担当は後輩の大倉。

毎度泊りの出張コースになるその取引先の担当になったせいで、2人はデキてるんやないかとか、顔で契約取ってるんやないかとか言われていた。
2人とも独身フリーなのは知ってるし、別にそんな噂されても本人たちはどこ吹く風やったけど。

長年大倉と横子の美男美女コンビでうまくいっていたその取引先は、うちの部署の中でもまあまあなお得意様で、大倉には大倉のやり方があって、その補佐は絶対にAがいい、と言って譲らない横子。


大倉の補佐として泊りの山形出張に行くAを想像したら、またムカついて胸がぎゅうっとなった。






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