日日是好日 2

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仕事中はガチガチやけど、休み時間とか終業後とか、仕事外の時間の彼女はイメージが少し違う。


ちょっとだけ柔らかくなって、ふわふわ微笑したりちょっと疲れた顔したりして感情がうっすら見え隠れする。


そう言うたら研修最後の日に爆発したのは例外中の例外やったな。

研修のレポートが書けなくて泣きながら残業して、俺もそれに付き合って終わってから一緒にご飯食べて帰った。




あのとき


「好きです」と言われたんやけど




前職で何か辛い思いをしたみたいやから、新しい職場ですりこみ的に教育係の俺に懐いてくれてるだけやないかな、とか

そもそもこんな若いかわいい子が俺みたいなおっさんを男として好きになってくれるはずないし、とか


いろいろぐちゃぐちゃ考えた結果、何も返せていなかった。




仕事終わりに課のみんなでご飯行ったりすることもあるけど、それで終わり。

返事をするでもない、返事が欲しい空気もない。







横「ナンパされんかった？」

「いえ。待ってる間にあそこの子たちとちょっとお話しましたけど」


そう言って彼女が目線を送った先には、大学生っぽい男子の集団。


「あそこの子たち」とか言うて俺からしたら君も同じくらいやねんけど。


ナンパされてるやん。

天然か。



「主任って天然ですよね」


急に思っていたことが自分に返ってきたのでびっくりして彼女の方を見ると、飲み物と氷が満載のクーラーボックスの中から俺のスマホが出てきた。


…さっきからどこにいったんかな、と思って探してた。


横「Aさんも天然やろ。ナンパされてないとか言うて、がっつりされとるやん」


ちょっとムキになって言い返したら、彼女はキンキンに冷えたスマホを俺に差し出しながらたまりかねたようにクスクス笑いだした。


「よく見てください」


言われてじっと見たら、大学生やと思っていた集団は若い家族連れの集まりやった。

ちゃんと見たら子供たちが足元で子犬みたいにじゃれてコロコロしとるし、子供特有の甲高い笑い声も聞こえる。


「あそこの子」ってあれかいな。

うわっ、俺はっず。




横「いっつもそうやって笑っとったらええのに」



照れ隠しにそう言うたら、彼女は思いのほか傷ついた顔をした。

あれ、地雷やったかな。



「…やっぱり、笑えてませんか？前の会社では、“鉄仮面”とか言われてたんです」






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