3 ページ3
.
2か月ぶりに抱き合ったベッドの上で、章大が言う。
ほんまはちゃんとAと付き合ってるって言いたい
Aは俺のもんやって地球上のみんなに自慢したいし
職場でも“安田”やなくて名前で呼んでほしい
もう我慢すんのは嫌や
今度こそ、俺が誰にも何も言わせへんから
そのために頑張ったから
だから―――
ご褒美が、欲しい
今日の章大は、ちょっと怖かった。
余裕がなくて、性急で、乱暴だった。
いつもは涼しい顔の下に上手に隠しているその感情をさらけ出させたのは私かと思ったら、不謹慎だけれどもちょっと興奮した。
そして同時に死にたくなるくらいの自己嫌悪に襲われている。
「…私の事、嫌いになった?」
嫌われてもしょうがない。
章大が昇格して、私はちゃんと嬉しかった。
サテライトの立ち上げのためにこの2か月殆ど休みなしで一緒に働いて、私も頑張ったけれども、それ以上に頑張っている姿を間近で見ていて、昇格するのは当然章大だと思っていた。
誰よりも先に一番におめでとうって言いたかったし、誇らしくて仕方がなかった。
章大に我慢をさせて、それでもちゃんとできない私はやっぱり、嫌われてもしょうがない。
それなのに
また彼はいつもの優しい、諦めた顔で笑う。
安「どうやっても嫌いになれないから困っとんねん」
安「明日になったらまた他人の顔するくせに」
安「そん顏はズルいぞ」
その日、私は章大に朝までしつこく抱かれて、噛まれて、ぐずぐずにされた。
翌日、章大は飲み会を途中で抜けたことをみんなに平謝りして回っていた。
私達は来週から、新しい事業所に移る。
異動のために自分のデスクを整理していたら、章大にご執心の後輩がやってきた。
「Aさんは荷物少なくて手伝いいらなそうですね。あー、いいなぁ。私も安田さんと同じ部署に異動したーい」
「あっち、手伝ってあげたら?」
書類が山積みの乱雑な自分のデスクと格闘している章大の方を見ながら言うと、彼女はぷくっと頬を膨らませた。
「もう断られたんですぅ」
ああ、そうですか。
視線を感じたのか、章大がじっとこっちを見ていた。
「そういえば、Aさんちの猫ちゃんは、なんていう名前ですか?」
「しょうた。――大好きなの」
章大の机の上からドサッと荷物が落ちる音がして、真っ赤になって隠れたしっぽが見えた。
終
464人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
めろんぱん(プロフ) - きりん虫さん» こちらこそ!!!!来年もどうぞ!よろしくお願いいたします!!!!胸キュン年納め、ありがとうございました!!!!!!涙 (2020年12月31日 9時) (レス) id: b5cc118e0b (このIDを非表示/違反報告)
きりん虫(プロフ) - ブルームーンさん» 年の瀬にふざけて終わったよ!ブルームーンさんもどうか良いお年を。そして来年もよろしくお願いします! (2020年12月31日 8時) (レス) id: 3c36dba7b1 (このIDを非表示/違反報告)
きりん虫(プロフ) - めろんぱんさん» 肉(笑)お歳暮という事でひとつご笑納下さい。来年もよろしくお願いします! (2020年12月31日 8時) (レス) id: 3c36dba7b1 (このIDを非表示/違反報告)
ブルームーン(プロフ) - お疲れさまでした!毎回とっても楽しませて頂きました!良いお年を〜♪ (2020年12月31日 8時) (レス) id: a475b78d7e (このIDを非表示/違反報告)
めろんぱん(プロフ) - すばりょーーーーーーーーーーー!!!!!って叫ぶだけのコメント残そうとしたらあとがきで死にました え、肉送ったらいいですか??? (2020年12月31日 7時) (レス) id: b5cc118e0b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:きりん虫 | 作成日時:2020年3月30日 6時