日日是好日 2

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「おはようございます」


渋「ん、おはよう」



出張明けの月曜日、電車のドアが開いたら、ちょっときまり悪そうな顔のAと目が合った。



渋「まさかとは思うけど」


渋「、、、なんかあった？」



明らかに何か隠し事をしてる彼女の顔を見て、頭に血が昇った。



渋「言え」


「あの」


「絶対、大丈夫だと思ったんですけど」


「実は金曜の帰りの電車で、ちょっとあの、もしかしたら痴漢かな、っていうのがあって」



顔を真っ赤にして、しどろもどろに話し出したAによると、残業した帰りに乗った電車の車内で、寝ぼけた酔っ払いと席が隣になって、太ももの上に手を置かれたらしい。


もしかしたら痴漢かな、やないがな。がっつり痴漢やん。



渋「―――そやから言うたやないか」



俺もまだ触ってへんのに。


俺のやのに。


怒ったらあかん。悪いのはAやない、そのゴミや。わかっているのにどんどん頭に血は昇る。




おさめろ、おさめろ。6秒我慢。

いち、に、さん、よん、ご、ろく、、、






必死で自分を抑えていたら、Aはパッと明るい顔になって言った。



「でも、あの、ペンを、持っていたので、一矢報いてやりました」


渋「、、、えっ！刺したん？！」




まさかの尼崎のヤンキー作戦ハマった？


ていうか俺の言う事ちゃんと聞いとるやん。

彼女はきょとん、として言った。





「いえ、あの、寝ている間に、手に『チカン』って書きました」





―――えー。



「サインペンしかなくて」




ぶはッと誰かが噴き出した気配がして横を向くと、周りの乗客数人が慌てて顔を逸らしたのが見えた。

みんな肩がちょっと震えとる…。



「…あの、部長」

「怒ってますか？」





さっきまでめっちゃ怒ってたけど。

その痴漢にはめっちゃ腹立つけど。




6秒経ってちょっと今笑いそうやねん。

その害のないかわいらしい顔でこっち見んといてくれんかな。




渋「いや」


渋「俺の彼女、かわええな。と思ってたとこ」


渋「惚れ直すわ、まじで」



「ちょっ、やめてください」



渋「ほんまにかわいい」



「セクハラですよ部長」




電車を降りた後で、真っ赤になった彼女に「もうあの電車乗れない！」言うて怒られたけど




ほんまに俺の彼女は、いろいろと目が離せないから、セクハラ上司でももうええか。









終

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