日日是好日 2

渋谷部長 ページ15

渋谷部長







朝の通勤電車は、いつもギュウギュウの満員。


つらい。


もっと恵まれた体格なら楽やったかもしれんけど、残念ながら俺は生まれてこのかたハイヒール履いたお姉さんに見下ろされて押されてよろけて踏まれる体型以外になったことがない。

いや、それはそれで得してるかもしれんけど。





そんでも2か月くらい前から楽しみができた。


俺の2つあとの駅から電車に乗ってくる彼女。



「おはようございます」


渋「ん、おはよう」



初めは俺が腕を引かんと横に来ようとしなかったけど、今は自分から俺の横のスペースに乗り込んでくるようになった。

それはもう嬉しそうな顏して。



今日もかわいい俺の彼女。









Aは、朝の通勤電車でいつも一緒になる同じ会社の子やった。

なんやぼーっとして危なっかしい子やなと思ってたその子が、観察対象から恋愛対象になるのは早かった。


向こうは年下やし部下やし、なによりお互い大人なんやし、もうちょっといろいろ余裕を持って関係性を築こう、と思ってたのに、ふわふわしているAを見とったらいてもたってもいられず

割と強引に関係をはっきりさせて、今は俺の彼女。



パワハラには当たらないことを祈る。







もっとも、俺の彼女とは言うても、付き合ってる男女らしいことは何もできてない。

高校生みたいに朝一緒の電車で会社に行くだけ。


間の悪いことに俺は部長に昇格したばかりで残業やら研修やら、プライベートなんてない有様だった。

この朝の通勤時間だけが、唯一ちゃんと顔見て話せる時間で、俺の癒しやったのに。



渋「明日から泊りがけの出張やから、今週もう一緒に行かれへんわ」


「そうですか、、、。大変ですね、頑張ってください」



彼女はしょぼんとしてうつむいた。


満員電車で密着した中では、ちょっと動いただけで体が触れたりシャンプーのにおいが漂ってきたりする。


ムラムラするわ〜。俺ほんまに高校生みたい。



渋「朝一人で大丈夫か？」




電車の中の彼女は、ふわふわした眠そうな顔して人に押されてあっちにフラフラ、こっちにフラフラ。

痴漢されとんのに全然気づいてなかったのはハラハラしたし、ちょっと目え離すと俺と同じでハイヒールを履いたお姉さんにおもっきり足踏まれてたりするし。






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