日日是好日 2

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丸「はぁ…」


休日返上の営業。


うちの会社は技術系の零細企業で、社員が少ない分みんながいろんな仕事を兼務していて、しかもほぼほぼ技術職の職人気質の男ばっかり。


今までは口下手な社員のカドが立たんように社長が営業みたいなことを率先してやってたけど、もともと社長は酒もあんまり飲まれへんし無理して倒れたこともあって、足を使って営業先回ったり接待したりするんはもう社長に回さんほうがええんちゃうかな、と思ってはいた。


急に思い立って休みの日にスーツ着て、営業先を回って回って、気がついたらもう空は暗くなっていて、疲れた足を引きずって実家の玄関を開ける。




丸「ただいま、、、と」



家の中からは酔っ払い特有のどんちゃん騒ぎの気配と、玄関にはおじさんの革靴が多数。

これは…。


急いで中に入って台所を覗くと、母さんがフル回転で忙しく料理を作っている。



丸「今日飲み会やったん？連絡くれたら帰ってきたのに」



経営者同士の飲み会はゴルフの帰りとかに我が家で定期的に開かれていて、頑固なおっさん社長の酔っ払いが集まると収集のつかない騒ぎになる。

母親が鬼のように働かされて子供の自分は酔っ払いのオモチャにされる魔の集会。軽いトラウマ。


父さんも酒は強くないくせに虚勢張って飲むからすぐ潰れるし、父さんの入院騒ぎで母さんも疲れてたからしばらくはないやろうと踏んでたのに。




母「あんた朝からスーツ着て出てったから仕事やろうし邪魔したらあかんと思って。そんな事より座敷の方見てきてくれへん？気ぃ利かせたつもりなんか知らんけどお父さんがAちゃんを呼び出してしまって」



丸「えぇッ？」



何と！あの乱痴気騒ぎにAさんを呼んだやと？！


クソ親父酔ってとち狂ったか絶対許さへん！！



ジャケットも脱がんまま急いで向かった座敷では、案の定タガの外れたおっさん達のでっかい声が聞こえている。



戸を開けようと勇んで手を掛けたら「お前んとこのドラ息子はあかんなぁ」という声が聞こえて、どうやら僕の話をしているらしいと察する。




ほんまに僕は間が悪い。


こんなタイミングで入ったら場が冷えるか燃えるかして気まずい思いをすること間違いなしや。



彼女が中でどうしてるんか、すっごく気になるのに。


一刻も早く中に入って彼女の無事を確認したいのに。


僕の悪い話なんか、君の耳に入れたくないのに。







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