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あの日から3日休んだ。3日間、ひたすら彼の言うことを聞いて、目の腫れも冷やしてもらい、喉のケアもしてもらえるようになった。
あれから、神宮寺とどの距離感でいればいいか分からなくて。
どうするのが正解も分からなくて。
「帰ろっと、お疲れさま〜」
仕事が終わりいつも通りを装いながら片手を振って、逃げるように楽屋を出た。
早く帰って、彼に顔を見せなければ。
そう思ったのに。
「玄樹、一緒に帰ろう」
神宮寺からの誘いが嬉しくて。
ーーーふたりの会話はよく弾んだ。
夢のこと、はたまた他愛のないこと、どんな話も楽しくて、神宮寺の優しい表情に安心感を覚えた。
「玄樹、恋人と、上手くいってる?」
「………、うん」
突然の問いに、息が震えた。
「そっか。最近、そんな感じしなかったからさ」
「ちょっと喧嘩することもあるけど、平気、だよ」
「……これ」
目も合わせることもせず答えると、小さな袋を差し出された。
中のネックレスを見て、思わず笑みを零した。
「欲しかったやつだ!」
「玄樹のことならわかってるつもりだから」
頭を2度、優しく叩かれ、堪えきれず涙がこぼれた。
どうすればいい、ねぇ、神宮寺
助けて。
たくさんの思いを飲み込んで、笑って見せた。
「ありがと、神宮寺」
「なにか、辛いことがあったら頼って。ほら、相方だし」
うんうんと頷きながら、胸がひどくいたんだ。
そっ、と神宮寺の手が伸びて、温もりが近づくーーその刹那。
「げんき」
「…っ!」
弾かれたように顔を上げ、神宮寺を拒んだ。
それはまるで反射的に。
躾られたような動きだった。
「何してるの?」
口元に笑みを浮かべているが、そこから感じるプレッシャーは大きく、それだけで足が震えた。
静かに手を差し伸べる彼から感じる怒気。
「………」
神宮寺から離れなきゃいけない。
神宮寺、神宮寺。
ここで神宮寺に甘えてしまえばきっと、傷つけてしまうんだろう。
「お疲れさま、帰るね」
今出来る精一杯の笑顔で告げ、彼の手をとり家へと入る。
ねぇ、……そんな表情しなくても、平気だよ
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きぃぽぽ(プロフ) - 花さん» 花さん*はじめまして、コメントありがとうございます!ほんの少しの文なのに、そうして雑誌まで見返して頂いて!嬉しい限りです。最後まで是非お楽しみください (2020年1月5日 20時) (レス) id: 8ca93dc13a (このIDを非表示/違反報告)
花(プロフ) - 他にない視点のおはなしでいつもどきどきしながら読ませていただいています*^^*覚えある雑誌のシーンに「あ!」と切り抜きあさりました(笑)いつも素敵なお話ありがとうございます*^^*つづきもたのしみにしています♪ (2019年12月29日 8時) (レス) id: 5858306d0d (このIDを非表示/違反報告)
きぃぽぽ(プロフ) - ななみさん» はじめまして、ななみさん*読んで頂き、ありがとうございます。とても嬉しいお言葉です、本当にありがとうございます。これからも楽しんで頂けたら幸いです。 (2019年11月8日 0時) (レス) id: 8ca93dc13a (このIDを非表示/違反報告)
ななみ(プロフ) - はじめまして。読ませていただいて、優しい空気感惹かれました。読んで、映像が(映画みたい)頭に浮かんでくる作品が好きです。きぃぽぽさんの作品をもっと読みたいです。更新楽しみにお待ちしております。 (2019年11月7日 16時) (レス) id: 56b007f690 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きぃぽぽ | 作成日時:2019年11月3日 22時