ちょっとおかしなキミの金銭感覚【九井一】2

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「これで飲みやすくなったな」



ペロッと舌を出して言えば、え？とまた状況処理能力が0になったらしいAが声を出す。



きっと3秒後くらいにパニックになるであろうAを思い浮かべて、未だ両手で握りしめている缶を下から支える。



『え、ぇ…

え？……え！？』




案の定更に顔を赤くさせて勢いよく缶から離した手を自分の頬に当てたAは、何が起きた…？と呟いた。



Aの手から落ちることなく俺の手に移動したおしるこの缶を、Aが落ち着くまで今度は俺が両手で握りしめて暖を取る。



チラリと俺を見たAは、俺の手に持っているおしるこを見て、頬に当てていた自分の手を見る。



『いつの間に！？』



コイツのこう言うところはマジでバカだとは思うが、それすら可愛く思えるのはそれだけ俺が惚れ込んでいるということで


まいったな。なんて思ってみても後悔などするはずもなく、冷める前に飲めよ。と自分でも信じられないくらいの柔らかな声で言って、その小さな手に缶を持たせた。




風邪引く前に帰るか。と無事飲み終わったAの手を引いて歩く。




「俺さ、初めてだったんだよ」


『なにが？』


「誰かに何か奢ってもらうの」



上着のポッケに入れた、指を絡めて繋いだ手に少し力を込めた。



今日のコーヒー？と俺の顔を下から見上げて聞くAの目を見て首を横に振る。



「初めてAに会った日のペットボトルのコーヒー」



あとココアも。と今日のように寒い日に貰ったココアの暖かさを思い出す。




あれか〜。とちょっとおかしな反応をするAに首を傾げれば、実は。と目を逸らした。



『実はあの日すぐそこの自販機に行ったんだけど、財布にお金入ってなくて

自販機より安く買えるスーパーに走ったんだよね…』



ハハ…。と今頃になってスーパーに行った理由を暴露したAと、Aらしい理由に笑いが込み上げた。



アハハッと俺の笑い声がしばらく夜道に響く。



「お前あの日イヌピーが金取ってたらどうするつもりだったんだよ」


はぁ。笑ったわ。と繋いでいない方の手で腹を摩りながら聞けば、それ自販機前で財布開けた時思ったよね。と他人事のように言う。



『自転車を人質…じゃないな
物質にして、お金取りに帰ってたかな
その月の食費を…』



「もやしで生きるつもりかよ」



冗談のつもりで言えば、割とよくある。と返ってきて思わず足を止めた。

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