11ー8,妖精界でのこと【ユンギ視点】 ページ42
最近、家でのジンヒョンは元気が無い。
いや、いつも通り騒がしくて、ジョングクとじゃれ合いながら奇声をあげて…そういう点では元気なんだけど…
それはどこか空元気で、俺にはそれがすぐに分かった。
ある日、ヒョンがソファで本を読んでいるのを見かけた。
あそこはナムジュンの読書の定位置。
だから、ヒョンがいるのは珍しかった。
眉間に皺を寄せながら、険しい顔で書籍を見つめるヒョン。
しばらくするとヒョンは“はぁ”と深いため息をつき、読んでいたページをテーブルの上に伏せてどこかへ行ってしまった。
普段は明るくてポジティブなヒョン。
そんな彼にあんな表情をさせる理由が知りたくて、俺は興味本位で彼のいない隙にそのページを覗き見た。
そしてそこに書かれていたのは…
“妖精と人間が恋に落ちると、その人間の生気を無意識に吸ってしまう”
それを読んで、俺はふと、つい最近まで幸せそうにヒョンが俺達に話していた“ある女の子”のことを思い出した。
たしか名前は……○○。
全ての事柄が繋がって、俺は何となく察する。
たしか……ヒョンは前にもこんな事があった。
人間の女の子に恋をして、永遠の別れを突きつけられた事が。
あの頃のヒョンは、まるでそこに居ても居ないようだった。
俺達の前では明るく振る舞っていたヒョンだけど、ふとした時に見せる希望を失ったような目が、俺は今でも忘れられない。
けどそんなヒョンも、あの子と出会ってから変わった。
前みたいな活力を取り戻して、毎日が本当に楽しそうだったんだ。
「…ヒョン、大丈夫?」
コーヒーを取って戻ってきたヒョンに、大丈夫でないことをわかっていながらそう聞く。
ジン「ユンギヤ、お前は意外とそういうとこ敏感だよな。」
そう言ったヒョンは、“ありがとな”と言ってヒャヒャっと笑った。
「キツくなったら頼ってくださいよ。
てか、キツくなる前に。」
ジン「ヤーお前は優しいなぁ。ヒョン感動して泣きそうだよ」
「…そういうのいいんで。」
ジン「…」
「あんま無理、しないでください。」
すぐにおちゃらけて、自分の傷を隠そうとするヒョン。
それがヒョンの良いところで…でも、悪いところ。
ジン「ユンギヤ」
「なんですか?」
ジン「あの子を頼んだよ」
「…」
ジン「きっと、僕が傷つけてしまうと思うから」
そう呟いた彼は、いつかの彼と重なった。
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なーさ(プロフ) - Chocoさん» コメントありがとうございます!感動していただけたようで、とても嬉しいです…。温かいお言葉をありがとうございます!今後の作品も応援していただけると嬉しいです! (2023年4月1日 8時) (レス) @page49 id: 292eed826b (このIDを非表示/違反報告)
Choco(プロフ) - こんばんわ、初コメ失礼します!なーささんの作品を読ませてもらい、ホントに恥ずかしいですが泣いてしまいました…。素敵な作品を作って下さりありがとうございます!!なーささんの作品とても大好きです! (2023年4月1日 1時) (レス) id: 59651d7816 (このIDを非表示/違反報告)
なーさ(プロフ) - あんにょんさんさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけてとても嬉しいです…励みになります(泣)これからも更新頑張りますね! (2023年2月10日 0時) (レス) id: 292eed826b (このIDを非表示/違反報告)
あんにょんさん(プロフ) - もう、ほんと、神作品すぎます…!いっそドラマ化してほしいくらいです笑 応援しています!! (2023年2月9日 15時) (レス) id: 999eb198b5 (このIDを非表示/違反報告)
なーさ(プロフ) - 月花さん» コメントありがとうございます!尊敬だなんて……私にはもったいないお言葉です。(泣)これからもこまめな投稿を心掛けて頑張りますので、よろしくお願いいたします! (2021年7月13日 23時) (レス) id: 292eed826b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:なーさ | 作成日時:2021年6月15日 23時