17、上弦の鬼 ページ17
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薄暗い路地裏で噎せ返るような血の匂いと男の悲鳴が響く。少女の周りには事切れた男二人の死体が転がっていた。
「ひいいっ、…ゆるしてください…!」
「あはは!そんなに怖がらないでよ。さっきまで無駄にベラベラ喋ってたのにどうしたの?可哀想に、こんなに怯えちゃってさ。でも安心してよ、私は君を殺そうとなんてしてない。本当だよ?そこに倒れてる二人は仕方なかったけど君は特別。君はその二人と違って斬りごたえがなさそ…じゃなくてとても優しそうだからね。私も無駄な殺生はしたくない」
「ほ…本当ですか…?!」
そう優しく言えば男は勢いよく顔をあげる。
先程とは打って変わって男の濁った瞳に光が宿る。希望に満ちた男の顔を見て笑いそうになるのを必死に耐える。
こんな簡単な嘘に騙されるなんて、本当に人間は愚かで単純で……吐き気がするくらい愛おしい(嘘)優しく抱きしめて骨をバキバキに折って殺してあげたい(嘘)
刀についた血をペロリと舐める。
さあてと、どうやって遊んであげようかなあ。なーんて思ってたら男の汚い手が私の腕を掴んだ。
「俺はもう家に帰っても……」
「きったな」
刀を振れば男の首が飛んだ。
首を失った胴体はぐしゃりと血だまりに倒れた。
あーあ、もうちょっと遊んでから殺そうと思ったのに。ついうっかり斬ってしまった。
安心感から一気に絶望に突き落とした時の恐怖に歪む表情が見たかったのに。私ってばうっかりさんなんだから!
まあいいや、と生き絶えた男の身体に腰をかける。ぐちゃりと肉が潰れる音なんて気にせず男達から奪った金を数えた。
うんうん結構持ってんじゃーん。
これで累に髪飾りのお礼でもしてあげよっかなあなんて思っていたら私しかいないはずの路地裏で声がした。
「うわあ結構ひどいことするねえ…もしかして君が噂の人斬りかい?」
気配がしなかった。声がした方へ顔を向ければ知らない男が立っていた。
瞳に文字が刻まれている。
「上弦の、弐…?」
瞳には上弦の弍の文字。
上弦なんてあれでしょ?下弦よりも強い鬼…。最悪だ。なんて私はついてないのだろう。
前世で何か悪いことでもしたのだろうか。悪いこともせず毎日徳だけを詰んでいるのに。
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たぴ(プロフ) - こなみさん» どストライクなんて…!ありがとうございます(号泣)頑張って描いたんで嬉しいです!応援ありがとうございます…! (2019年10月21日 19時) (レス) id: 8bf0134465 (このIDを非表示/違反報告)
たぴ(プロフ) - カカオお豆さん» カカオお豆さん…!いつも嬉しい感想ありがとうございます!更新もりもり頑張ります! (2019年10月21日 19時) (レス) id: 8bf0134465 (このIDを非表示/違反報告)
こなみ(プロフ) - 夢主ちゃんの絵見たんですが可愛すぎて鼻血でました。ドストライクです!次の話の予告も夢主ちゃんどうなっちゃうのかめっちゃ気になってしにそうです…!陰ながらいつも応援してます!! (2019年10月21日 19時) (レス) id: 8bdb7f5122 (このIDを非表示/違反報告)
カカオお豆(プロフ) - 予告の作り方上手くないですか!?めっちゃ気になるんんンンン!!!便新頑張ってください! (2019年10月21日 18時) (レス) id: 5ddd851753 (このIDを非表示/違反報告)
たぴ(プロフ) - らにさん» わわわ嬉しい感想ありがとうございます…!一番好きだなんて嬉しすぎて泣きそうです(泣) (2019年10月19日 12時) (レス) id: 8bf0134465 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:たぴ | 作成日時:2019年9月1日 11時