今日も彼女は想うだけ【煉獄杏寿郎】

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「───……っ」


ふいに耳元から落ち着いた声が聞こえた。
ゆっくり顔を右に向けると私の手元を覗く先生の顔が目の前にある。

「……せんせ」

「ちゃんと復習しているなんて偉いじゃないか」

よしよし、と私の後頭部に左手を置く先生。
さっきまで聞こえていた吹奏楽の音もテニスボールの音も一切聞こえなくなって、一瞬何が起こっているのか分からなかった。

だって



「君は本当に字が綺麗だな」



先生に触れられたのはこれが初めてだから。




「…な、なかなか苦戦してます、」

「んー。まあ、君は覚えがいいから大丈夫だろう！量が量だから少し時間はかかるかもしれないがな」

少し顔を横に向けるだけで、先生の顔横の髪が私の頬にあたる。



早く離れて下さい切実です。





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「何時までやるつもりだ？」

「…18時、とか」

「そうか！これから剣道部に顔を出してくるが
その後で良ければ、勉強を少し見てやろう！！」

「い、いいんですか？」

「うむっ！今日はわりと手が空いているからな！」

「ありがとうございます！」



先生が教室を出た事を確認し、私は机に顔をうつ伏せた。





息がしづらい心臓がうるさい顔も熱いし手も熱い。

無理。





「お〜とは」


「……っは、はい！！」



息付く間もなく廊下側から宇髄先生に呼ばれる。


思わずその場に立ち上がれば「ん？」と首を傾げた宇髄先生が教室に入ってきた。



「なになにどうしたよ」

「あっ…いえ、少しびっくりしただけです」



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