今日も彼女は想うだけ【煉獄杏寿郎】

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先生は鈍感だと思って完全に油断していた。

泣いちゃダメだって分かっているのに
先生の目を見た瞬間どんどん涙が溢れてきて

こうなるともう止められない。


「乙葉」

「─……っ…」


なんでこうなっちゃったの。




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「先生は何か悩みごととかないんですか？」

「ない！元気いっぱいだ！風邪も引いてない！」

「ふふ、本当に？」

「うむ！！！！」

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「今日もありがとうございました！
 受験頑張ります！先生も何かあったら
 いつでも相談して来てくださいね。
 私で良ければお話聞きます！！」

「うむ！その時は頼む！」

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「今日はいつもより元気がないですね？
 何かあったんですか？」

「うむ……」

「一人で悩んでいても解決しませんよ！
 私で良ければ話してくださいっ！」

「実はだな、」

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ううん。違う。

あの時、ああ言わなきゃ良かった
なんて後悔はしていない。

好きになった事を後悔したくない。



でも



私が先生を好きにならなければ
今頃先生の恋は叶ってた。

こんな夜遅くまで迷惑をかける事もなかった。





「……っ、ぅ…」


頭も心もすべてぐちゃぐちゃで。

一人になりたい。


そう思った時、


「まったく、君は」


先生の手が私の背中を包み込み

そっと、優しく抱き寄せられた。





「……っ…せんせい」

「君が俺のために色々と悩んでいてくれた事はよく分かった」

「君の想いもな」


そうつぶやいた先生の声は震えていて

そんな優しさにまた涙が溢れて

数分の間、私は先生の腕の中で泣きじゃくった。





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「乙葉、聞いてくれるか」


「……はい」









「君が一番分かっていると思うが
 これから先、君にどう接したらいいか

 ……正直さっぱり分からん。」


「……。」

「でしょうね。」





先生らしい答えが返ってきて少し安心する。





「ただ、これだけははっきりと言おう。」


「俺は君と過ごす時間が何よりも大切だ。」


「どんな形であれそれが無くなるのは耐えられない。」





「…え、」

「今はこの答えで許してくれるか？」




予想外の言葉に頭が真っ白になる中

眉毛を下げた先生が困ったように笑いかけてくるから

また想いが溢れこぼれてきて

私は指で涙を拭きながら、小さく頷いた。


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