今日も彼女は想うだけ【煉獄杏寿郎】

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「おいごら乙葉ァ
俺の授業に遅刻するなんざいい度胸だなァ？」

「す、すみません…お手洗が混んでいて」


五限は数学。
みんなの前で怒られる事なんてそうそうないので
恥ずかしくて机に座ってからしばらく顔を伏せていた。

案の定隣の席のしのぶちゃんが
「珍しいですね、具合でも悪いんですか？」
と心配そうに話しかけてきた。

不死川先生に聞こえないボリュームで
大丈夫だよって言って、黒板に視線を戻す。


チョークの音がカツ、カツと教室に鳴り響く。


不死川先生は黒板を書くスピードがとても早く
重要な部分以外はすぐに消してしまう。

数式に至るまでの過程を見逃さないように
必死に脳とシャーペンを動かしながら
五限が数学でよかったな、なんてふと思った。


「ここまでで何か質問ある奴いるかァ」


先生はいつもそう言うけど質問したらしたで
「それはさっき言っただろうがァ」って怒るから
怖くて誰も手をあげられない。


逆に煉獄先生の授業は誰からも質問がないと


「質問がないとはどういう事だ！！
一つや二つくらいあるだろう！！！」

なんて言ってすぐに怒る。





「……ふふっ」





「なァに笑ってんだァ？乙葉ァ」




「……！！」



咄嗟に顔をあげると
目の前に青筋を立てた不死川先生がいて
ガタンと大きくイスが動いた。


無意識に声が出ていたみたいで
またもやクラスメイトから集まる痛い視線。




「……っすみません、なんでもありません」




本当に今日はついていない。





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