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行けばいいのに足が進まない体育館。
目と鼻の先なのにすごくすごく遠くに感じる。
バスケットボールが床を打つ音を聞きながら美術室へ向かった。
「あれー?部長これからですか?」
「ちょっと気になるところがあったから。」
「じゃあ鍵お願いしていいですか?
私最後だったんで、お先に失礼します。」
「うん。また明日ね。」
私も3年生が引退して美術部の部長になった。
1月の作品は記憶を元に書いたあの日の樹くん。
助走をつけてホールの端から現れてトランポリンの反動でジャンプで半回転してる。
それはもう見ることもできないから、目に焼き付けた頭の中のフィルムが頼り。
自分で描いた絵を見てこんなに胸が苦しいのは初めてかもしれない。
鼻の奥がツンっとなることに気づかないふりをして廊下を歩く。
職員室に入って、安田先生の席へ鍵を返しに行く。
「安田先生、鍵返します。」
「遅くまでお疲れさん。
次のコンクールはどない?」
「ちょっと自信ないです。」
「被写体は人物にしたんやったっけ?」
「そうです。
でも…風景画にすればよかったなって少しだけ後悔してます。」
「大丈夫、南の絵は素直やから先生はいいと思うけどな。
その時の気持ちがよく描けてるから評価されるんやと思う。」
「ありがとうございます。」
「気を付けて帰ってね。」
「はい。」
職員室を後にして廊下に出ると、萩谷くんがそこに立ってた。
首からはいつもの愛用のデジイチを持って。
「南先輩。」
「萩谷くん。なんだか久しぶりだね。」
「文化祭の写真もらってないですよね?」
「あっうん。」
「樹に渡してって頼んだのになぁ…もう。」
「そうなんだ。
樹くんは元気?」
「元気は元気ですけど…。」
そのあとに何か言いたそうにしたので先に話を切り替える。
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初音(プロフ) - kikiさん» いえいえ!この作品の樹君がすごく好きで!これからも応援してます! (2019年2月13日 23時) (レス) id: c0fa5c81b4 (このIDを非表示/違反報告)
kiki(プロフ) - 初音さん» なんとお恥ずかしい・・・!rを打ってしまったことに気づいた時にはもう初音様がお読みになられて・・・早速読んで頂き誤字を教えてくださりありがとうございます! (2019年2月13日 23時) (レス) id: efa8082a4b (このIDを非表示/違反報告)
初音(プロフ) - Mrsだと既婚者になってしまいますよ(苦笑) (2019年2月13日 23時) (レス) id: c0fa5c81b4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:kiki | 作成日時:2019年2月13日 1時