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嫌だって大きな声を出せばいいけど、注目されるのは苦手。
声を出せない自分が弱くてどうしようもない。
振り払いたい右手も全然力が敵わない。
柔道でも習っていればよかった・・・ぐっと握られた右手が苦しい。
すると右斜め前辺りからこちらに向かってくる姿。
距離はあるけど樹くんが気付いてこちらに向かって来るのが見える。
「ちょっとちょっとー。」
その声と共に左手を引かれ、後ろ向いたまま誰かに背中ごとぶつかる。
「なんだよ。」
「困るなーうちの大事なお姫様を連れ去るなんて。」
「なんだよ、ちび。」
「ちびだなんて…失礼なやつだなー。」
安井がいつもつけてる香水、ちびだけど私よりは大きい。
すごい至近距離で見る安井はまつげが長いなんて、変なことを考える。
「おーっとうち後夜祭のナンパ行為はNGなんでー。」
安井の反対側から京本が現れて、大きな声で牽制する。
「駅までの道聞いてただけだよ。」
「の割にずいぶんこいつの手握ってたみたいだな。」
「美術部員の手は大事なんだからな。」
「るせー、ちび。」
「とりあえず先生呼ぶわ、どこの高校?」
大きな声でナンパなんて言ったもんだから視線が集まる。
先生がこちらに向かってきていて、京本がとどめをさせばどこかえ行ってしまった。
人がまばらになってから樹くんがやっとこちらにたどり着いた。
「みなみ先輩。大丈夫ですか?」
「うん、ちょっと焦ったけど大丈夫。」
「ほんとにすいません、助けてあげられなくて。」
「来てくれたの見えてたから・・・ありがとう。」
安井に背中を預けたままなのを思い出して、すっと距離を取る。
「おい、わんこ!」
「わんこって・・・俺っすよね。」
「大我いいじゃん、もう。」
「好きな女ぐらい守れよな、だせぇ。」
「大我!」
「あの・・・俺。」
「こいつのこと守れないなら渡さねぇからな。」
謎に怒った京本が体育館の出口に向かって歩いてく。
「あいつ今日機嫌悪ぃんだ、ごめんな。」
「樹くんほんとにごめんね、あとありがとね。」
「・・・失礼します。」
ペコッと頭を下げて去って行く樹くん。
なんか胸がきゅっとなりながら、安井と体育館を出た。
ちゃんと気づいてくれてたの私は知ってるのに。
なんであんなこと行ったんだろう、京本のやつ・・・。
かっこいい樹くんが見れたのに、もやもやは消えてくれなかった。
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初音(プロフ) - kikiさん» いえいえ!この作品の樹君がすごく好きで!これからも応援してます! (2019年2月13日 23時) (レス) id: c0fa5c81b4 (このIDを非表示/違反報告)
kiki(プロフ) - 初音さん» なんとお恥ずかしい・・・!rを打ってしまったことに気づいた時にはもう初音様がお読みになられて・・・早速読んで頂き誤字を教えてくださりありがとうございます! (2019年2月13日 23時) (レス) id: efa8082a4b (このIDを非表示/違反報告)
初音(プロフ) - Mrsだと既婚者になってしまいますよ(苦笑) (2019年2月13日 23時) (レス) id: c0fa5c81b4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:kiki | 作成日時:2019年2月13日 1時