エピローグ5/6 ページ46
警察庁を出た降谷は、そこで風見達部下と別れ、Aを駐車場に停めてある愛車へとエスコートした。
感嘆の声を上げ、丁寧に磨かれているそのボディを指先で軽く撫でると、Aは促されるまま助手席に乗り込んだ。
降谷も運転席に乗り込み、エンジンをかける。
「そういや…3つ目って何だ?」
「3つ目…?ああ…マンション。」
車に続いて出たマンションという発言に、降谷は数時間前の自分の心の声を撤回した。
「それも駄目。」
「えええ…ほとんど身辺整理しちゃったから、今更そこに帰るのも気が引ける…」
「帰す訳ないだろ。」
「え?」
『ーーぃっ!れーー…、零、起きて?』
Aの声が聞こえた気がする。
重い瞼を開けると、遮光カーテンの隙間から漏れた一筋の光が、部屋に差し込んでいるのが見える。
「(夢か…) ……っ‼」
慌てて降谷は自身の隣に目を向ける。
「夢じゃない…」
降谷の横で、Aは静かに寝息を立てて眠っていた。
あどけなさの残る寝顔を見て、不覚にも降谷は涙腺が緩みそうになる。
堪えた代わりに、降谷の口元が緩んだ。
投げ出されたAの左手をそっと手に取る。
自身と同じはずのシャンプーの香りが、Aからだと甘く感じる。
数日前のコナン、もとい新一の言葉が降谷の頭を過る。
『降谷さんの事だから、てっきりすぐに指輪でも渡して籍入れるかと思ってましたよ。』
『…大人には色々あるんだよ。』
Aの細い薬指を、降谷は愛おしそうに撫でるとそこにそっと唇を落とした。
全く起きる気配のないAを見て、どうしようかとも悩んだ降谷だったが、安心しきった様に眠るその姿に、降谷はもう一度その横に体を横たえる。
細い体をぎゅっと抱きしめる。
一緒に居ることの出来るこの時間が、未だに夢の様で、勿体無くて眠れる気はしないがこれで十分だった。
幸せな朝だ。
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虎鉄(プロフ) - まみこさん» まみこ様、私こそ深夜にすみません!こちらにまで涙。一気読み+コメントする時間まで割いて下さり本当に有難うございます!松田氏なりに降谷氏とは違う道を進むのでお付き合い下されば嬉しいです。大切に書いた話なのでそう言って頂けて感無量です。 (2022年7月24日 0時) (レス) id: 4e898d55ea (このIDを非表示/違反報告)
まみこ(プロフ) - 応援してます!!本当にこの作品は神です!! (2022年7月16日 1時) (レス) id: 9d3f4398ec (このIDを非表示/違反報告)
まみこ(プロフ) - こんばんは!!真夜中にすみません💦一気読みしました!マジで感動しました!!あー、夢主ちゃん良かったね!!と、保護者のような気持ちで読んでましたねw松田さんのほうも読んでます、頑張ってくださいね!! (2022年7月16日 1時) (レス) id: 9d3f4398ec (このIDを非表示/違反報告)
虎鉄(消えた捜査官松田ver作成中)(プロフ) - ひゆめさん» ひゆめ様、一気読みのお時間頂戴しまして……!かつコメントまで下さり本当に有難う御座います。クロサギ懐かしいですよね(^^)当時は全く意味分からんまま見てましたが笑。読んで下さってありがとうございました(^^)!2と合わせての返信で失礼します。 (2022年6月12日 10時) (レス) id: 4e898d55ea (このIDを非表示/違反報告)
ひゆめ(プロフ) - 同じく一気読みしました!!クロサギ懐かしいと思いながら進めていたら凄く惹き込まれました。とても面白かったです。 (2022年6月12日 0時) (レス) @page50 id: 141a54d8d9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:虎鉄 | 作成日時:2018年6月2日 0時