【名探偵コナン】消えた捜査官5【降谷零】

エピローグ4/6 ページ45

「お大事に。
もう二度と来ない事を願ってます。」

最後まで無愛想な挨拶に対して出た一瞬の苦笑いを引っ込め、Aはスタッフ達を眺め深々と頭を下げた。
Aの荷物を持つ降谷もそれに続いた。

「本当に、ありがとうございました。」

ある降谷の計らいにより、車は風見の運転により地下の裏通用口ではなく通常の駐車場に停められていた。
勿論、事前の安全対策やマスコミ対策も万全だ。

時刻は夕方に近づいてはいるものの、未だ太陽の光は燦々と降り注いでいる。

「太陽の光久しぶりな気がする…」

降谷は思った。
やはりAには暖かな陽だまりがよく似合う、と。





少し遠くから、一人の男がこちらに歩いてくる。
降谷はその場で足を止め、Aは逆にそのまま男へと向かって行った。
不審人物だと警戒し近付こうとした風見を、降谷が片手で制す。

「いや、大丈夫だ。」




Aと向かい合った男は口を開いた。

「あの人から伝言だ。
『チェスで俺に勝つには”人の心の裏を読むこと”だ』だとよ。」

「……」

「元気でな、黒崎。」

「…言ったはずですよ。
私は貴方を諦めた訳じゃない。
貴方が白鷺(シロサギ)である限り、いつか必ず捕まえてみせます。
今度は、警察官として。」

「望むところだ。」

Aのその言葉を聞いて、男は満足そうに笑みを浮かべた。





Aを乗せたクラウンは、まず警察庁へ向かう。
その途中、ある店の前を通りがかる。
今日は立て看板は飾られてはいない様だった。

「ちょっと止めてくれ」

路肩に停めた車から降りたAと降谷は、店の扉の前に立ち尽くした。
扉には「空き店舗」と書かれた紙が一枚、留められていない下半分が風にピラピラと踊っていた。

「人の心の裏を読むこと…」

そう呟くと、Aは恐る恐る紙に手を伸ばした。
風に靡くその1枚を裏返す。
そこには見覚えのあるファンシーな柄の絆創膏と、一枚の家族写真が貼られていた。
そして、そこには達筆でこう書き添えられていた。

”お前の父は、自慢の娘だと言っていた。”

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