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その後もAの昏睡状態は続き、毎日とはいかなかったが空いた時間を見つけては、というより空いた時間を無理やり作っては、往復2時間かけて病室へ足繁く通う日々が続いた。
あの後、赤井から出された要望は2つ、その要望の1つとしてAの生存は、今の所彼女を知る極一部にだけ知られる事となった。
「本当に生きてる…」
いつもは名推理を引っ提げるコナンでさえも、この時ばかりは降谷の目の前で惚けた様に声をあげた。
3人居る病室で聞こえる声は2人分だ。
「…安室さん、大丈夫?」
応えてくれる事のない人間に語りかけ続ける、というのは実に心が折れる作業だ。
コナンが、今この場に居ない赤井から聞いた話では、Aが目覚める可能性は五分五分だという事。
それに加えて多忙を極める安室の顔色を見て、コナンは心配そうに安室に問うた。
そんなコナンの心配をよそに、安室はAの手を握りながら、Aを見つめたまま答えた。
「…不思議な感覚なんだ。」
「不思議な感覚?」
「Aが生きている事を2回諦めた。
けど、Aはこうして俺の目の前で生きてる。」
「うん…」
「このまま目を覚ます事がないかもしれないと分かっていても…嬉しいんだ。」
「安室さん…」
それはきっと、降谷にしか言えない台詞だった。
「どうかしてると言われても仕方ないと思う。
生きているだけで、嬉しいんだ。」
「……」
泣きそうな降谷を見て、コナンは思う。
それでも、いつかは限界が来る、と。
「怖いんだと思う。
もしAが目を覚ましたとして…Aの瞳に俺は一体どう映るのか。
…俺は、最低な言葉をAに投げかけた。」
『どうしてお前は…っ‼犯罪者に成り下がった‼警察官としての誇りを忘れたのか⁉』
「ゼロの兄ちゃんって、変な所で自信なくすよね。」
いつかAに言われた台詞を、コナンが口にする。
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虎鉄(プロフ) - まみこさん» まみこ様、私こそ深夜にすみません!こちらにまで涙。一気読み+コメントする時間まで割いて下さり本当に有難うございます!松田氏なりに降谷氏とは違う道を進むのでお付き合い下されば嬉しいです。大切に書いた話なのでそう言って頂けて感無量です。 (2022年7月24日 0時) (レス) id: 4e898d55ea (このIDを非表示/違反報告)
まみこ(プロフ) - 応援してます!!本当にこの作品は神です!! (2022年7月16日 1時) (レス) id: 9d3f4398ec (このIDを非表示/違反報告)
まみこ(プロフ) - こんばんは!!真夜中にすみません💦一気読みしました!マジで感動しました!!あー、夢主ちゃん良かったね!!と、保護者のような気持ちで読んでましたねw松田さんのほうも読んでます、頑張ってくださいね!! (2022年7月16日 1時) (レス) id: 9d3f4398ec (このIDを非表示/違反報告)
虎鉄(消えた捜査官松田ver作成中)(プロフ) - ひゆめさん» ひゆめ様、一気読みのお時間頂戴しまして……!かつコメントまで下さり本当に有難う御座います。クロサギ懐かしいですよね(^^)当時は全く意味分からんまま見てましたが笑。読んで下さってありがとうございました(^^)!2と合わせての返信で失礼します。 (2022年6月12日 10時) (レス) id: 4e898d55ea (このIDを非表示/違反報告)
ひゆめ(プロフ) - 同じく一気読みしました!!クロサギ懐かしいと思いながら進めていたら凄く惹き込まれました。とても面白かったです。 (2022年6月12日 0時) (レス) @page50 id: 141a54d8d9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:虎鉄 | 作成日時:2018年6月2日 0時