検索窓
今日:30 hit、昨日:46 hit、合計:516,050 hit

174 ページ13

「止めようとは…思わなかったのか…っ?」

分かっている。
これは八つ当たりだと。
けれど、全てを知っていたにも関わらずみすみす彼女を死なせたこの男を、許す事は出来なかった。

「俺だって…止められるものなら、止めたかったさ。
でも…あれは無理だ。」

白石の顔に苛立ちが見え始める。

「あんな信念を持った奴が警察(そっち)側じゃなくて犯罪者(こっち)側に居たなんて、やっぱりこの国は腐ってる。
どうかしてる。」

「……」

「……でも」

白石は、少しの間黙り込んだ。
何かを言うのを躊躇うかの様な口元の動きが見えた。
最初に喧嘩を売ったのは降谷だ。
どんな非難の言葉も甘んじて受けるつもりだった。
しかし、白石の口をついて出たのは降谷の想像の真逆をいくものだった。


「そんな国でも命を懸けて守るお前を、あいつは守りたかったんだろうよ。」


ー『大切な人の、大切なものを護れる人になりたい。』ー

ー『零はすぐ周りが見えなくなって危なっかしいから、私がこっそり零を守ってあげるね。』ー


「……っ」

「ああ…質問に答えてなかったな。
知ってたとは少し違う。
あいつが詐欺師を隠れ蓑にして何かやろうとしてる事には早くから気付いてたさ。
あいつが詐欺師を殺したいほど憎んでいたら、どんな理由があっても俺には協力してくれなかっただろうしな。」


降谷の脳裏に、つい最近のニュースが浮かぶ。
いつかのパーティーでこの白石という男が接触していた大手建設会社が、顧客に対し巧みに欠陥住宅を売りさばいている、という何者かの告発を受けて行政の調査が入った事件は記憶に新しい。
現在調査中の為、司法的な断罪はまだだが、国民からの信頼の失墜は免れない。
会社の再建は絶望的だろう。


「理由は俺にもイマイチ分からねぇが…
桂木さんは、あいつに詐欺師という隠れ蓑を与えながら、本当は鮫島達の魔の手からあいつをずっと守ってたんだ。」


『人にはどんな形に見えてるか分からねぇが…
それでもこれだけは言える。
今、こうしてこいつが生きているのは間違いなく桂木さんのおかげだよ。』

脳裏で、あの日の白石が、ほれ見た事か、という様な顔で降谷を笑う。


過去の白石を消し去り、降谷は目の前の現実に意識を戻す。
既に白石は降谷に背を向けて歩き出していた。

「詐欺師は…回りくどい言い方する人間しか居ないのか?」

175→←173



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (792 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
1166人がお気に入り
設定タグ:名探偵コナン , 降谷零 , 安室透   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

虎鉄(プロフ) - まみこさん» まみこ様、私こそ深夜にすみません!こちらにまで涙。一気読み+コメントする時間まで割いて下さり本当に有難うございます!松田氏なりに降谷氏とは違う道を進むのでお付き合い下されば嬉しいです。大切に書いた話なのでそう言って頂けて感無量です。 (2022年7月24日 0時) (レス) id: 4e898d55ea (このIDを非表示/違反報告)
まみこ(プロフ) - 応援してます!!本当にこの作品は神です!! (2022年7月16日 1時) (レス) id: 9d3f4398ec (このIDを非表示/違反報告)
まみこ(プロフ) - こんばんは!!真夜中にすみません💦一気読みしました!マジで感動しました!!あー、夢主ちゃん良かったね!!と、保護者のような気持ちで読んでましたねw松田さんのほうも読んでます、頑張ってくださいね!! (2022年7月16日 1時) (レス) id: 9d3f4398ec (このIDを非表示/違反報告)
虎鉄(消えた捜査官松田ver作成中)(プロフ) - ひゆめさん» ひゆめ様、一気読みのお時間頂戴しまして……!かつコメントまで下さり本当に有難う御座います。クロサギ懐かしいですよね(^^)当時は全く意味分からんまま見てましたが笑。読んで下さってありがとうございました(^^)!2と合わせての返信で失礼します。 (2022年6月12日 10時) (レス) id: 4e898d55ea (このIDを非表示/違反報告)
ひゆめ(プロフ) - 同じく一気読みしました!!クロサギ懐かしいと思いながら進めていたら凄く惹き込まれました。とても面白かったです。 (2022年6月12日 0時) (レス) @page50 id: 141a54d8d9 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:虎鉄 | 作成日時:2018年6月2日 0時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。