[d!]我々と4年目の第1歩を。[建国記念] (ページ10)

今日:15 hit、昨日:8 hit、合計:15,328 hit

＊ページ10

「んー、知らんわぁ…すまんな」

と言って少し申し訳なさげにゾムの顔を見ると、先程よりもニヤニヤと悪い笑顔になっていた。

え、何その表情怖いんやけど…。
なんか嫌な予感がする…そう思って少し後ろに下がって距離を取ろうとしたら、ゾムに腰を掴まれてしまった。

え！？ちょ、平民の女が軍人の男から逃げられないやん！

「なんで逃げようとしてるんですかァ！ダメっすよォ！」

と言いつつニヤニヤと笑っている。

「安心せぇ！とって食うたりせんから！」

「分かったけど！なら一旦離してぇや！身動き取れんわ！」

と言うと

「おっとすまんな」

と言って離してくれた。

「それで、ピアスの起源の話しやったっけ？」

ゾムの行動のせいでそれてしまった話を思い出して言うと、ゾムは嬉々として話し出した。

「そうそう！ピアスはな中世ヨーロッパからから伝わってきとるんよ。そんで、その時代では1つのピアスを男女で分けてつけるねん。」

「へぇー1つのピアスを2人で分けるんや、今とは違うんやな」

「せやねん！そんで、男は左耳にピアスを付けて、そのピアスを愛する女性に見立てて『命を懸けてあなたを守る』っていう誓いを立てたんよ。」

「そんで、もう1つのピアスを愛する女性に贈って受け取った女性は『あなたの想いに答える』って意味で男性と対になるように右耳にピアスを付けるんよ。」

そう言うと、ゾムは私のあげた彼色のピアスの片方を左耳につけた。
そして、私の目を真っ直ぐに見て真剣な目で言った。

「これから先、戦争もあると思う。それでも、俺がAの事を命をかけて守ったる。やから、これからも俺とずっと一緒におって欲しい。」

そう言いながらゾムは、私の手にもう片方の彼色のピアスを握らせた。

軍人の中でも幹部と付き合うと言うのは凄いことではある。

しかし、それだけ危険が伴う地位であるのだ。敵国に狙われる事だってあるから命を落とす危険性も付いてくる。

その事は私もゾムも分かっていた。
ゾムは何も言わないで私を見ている。
不安と期待の入り交じったみたいな変な顔。

でもね、悩むまでもない。

私の答えなどとうの昔に決まっているのだから。

ゾムに渡された彼色のピアスを右耳につける。

「私の事、一生守ってな！愛しとるでゾム！」

私はそう言って満面の笑みでゾムに抱きついて、ゾムの顔を見上げた。
ゾムは少し泣きそうで、でもとても嬉しそうに笑って

「勿論や！俺も愛しとるで！A」

と言った。

笑い合うふたりの耳には、お揃いのピアスが輝いていた。