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今夜の宿は節約のために安いホテルにしたんだけど、窓からはあの有名なプール付きのホテルが見えて、なんだか切ない気分になった。
私は数カ月後、この街に住み始めるんだ。
そう思っただけで、何故か憂鬱になってきた。
私は…、この街でうまくやっていけるんだろうか。
そんな私の様子に全く気付いてない裕太くんは、多少強引気味に私を街に連れ出した。
ホテルの外で、すぐにタクシーを拾った裕太くんは、
「Singapore Zoo。」
と、下手な英語で運転手に伝えた。
「Zooって、動物園?」
「そう、今だけ夜の動物園のイベントをしてんだって。」
「夜に動物に会えるってこと?」
「というより、プロジェクションマッピングとか、イルミネーションのイベントをやってんだって。」
すました顔で裕太くんは答えてるけど、手に持ってるスマホには動物園の日本語ページが開かれていて、
きっと私の為にいろいろ調べてくれたんだろうなと思ったら、少しずつ緊張がほぐれてきた。
「調べてくれてたんだ?」
「…まあ、Aの喜びそうな所をいくつかね。
ある程度の用事が終わったら連れてってやろうと思ってたけど、なんか今日のA、ガチガチに緊張してるみたいだから。
ちょっとリラックスさせてやろうかと思って」
って、けっこうなドヤ顔で私の頭に指を伸ばす。
前髪を指でふるふると揺らして、そのままポンポンと緩くバウンドさせては、
「動物園ってわかった途端に、Aの顔がユルユルになったから。
提案してよかったわ」
とか、自分もユルユルに微笑みながらそんなことを言う。
到着した夜の動物園は、なんだか不思議な雰囲気。
来たことのない動物園なんだけど、昼間はまた違う景色なんだろうな。
手を繋いだまま真っ暗な動物園の中を、光を頼りに進んでいく様子は、まるで私達の現状そのもののように思えた。
「怖い?」
不意に裕太くんはそんなことを聞いてくる。
「今?」
「そうじゃなくて、結婚してこっちに住むこと。」
うん、かなりね。
心配性な私の性格上、それは仕方ないことなんだけど。
「裕太くんは?
緊張してない?」
「少しはしてるけど、どっちかっていうとワクワクしてる方が先かも。」
うん、それも知ってる。
さっきからワクワクが止まんないって横顔をしてるから。
私は裕太くんのその横顔を隣で眺めながら、この先もこの街で暮らしていくことになるんだろう。
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クッキーベル(プロフ) - 昨年のクリスマスからこの作品を今日までで一気読みさせていただきました!!すごく面白くて続きが気になります!!!更新大変だとは思いますが、これからも頑張ってください!!応援してます!! (2021年1月2日 19時) (レス) id: 456e770b4f (このIDを非表示/違反報告)
えり(プロフ) - 楽しみに更新待っていますね。^_^ (2020年7月28日 0時) (レス) id: 8591dd4797 (このIDを非表示/違反報告)
bakutan(プロフ) - こんばんは!この物語とても好きです!ゆっくりでも良いので更新再開してください!!楽しみに待ってます! (2020年6月3日 19時) (レス) id: dde750c273 (このIDを非表示/違反報告)
わかめ(プロフ) - えりさん» こちらも大変お返事が遅くなりまして!こちらも読んでくださってるとは、ありがとうございます。こちらは更にのんびり更新でやってますが、どうぞよろしくお願いしますm(__)m (2020年3月2日 1時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
えり(プロフ) - こんばんは!こちらも楽しみに読んでいます。めちゃくちゃ素の玉ちゃんが出てる感じでリアル感もあり楽しみです!ゆっくりご都合良い時に更新してくださいね^_^楽しみに待ってます。 (2020年1月25日 22時) (レス) id: 8591dd4797 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:わかめ | 作成日時:2019年10月6日 21時