ストロベリー・オン・ザ・ショートケーキ 16

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学生結婚…。

正直、思ってもみなかったことだった。

「よく考えたら、別に卒業するまで待つ理由ってなくない？
もう既に一緒に暮らしてるわけだし。
就職に支障があるわけでもないし。」

「確かにそうだけど…。
でも学生結婚する理由もなくない？｣

別に嫌なわけじゃないんだよ。

ただ、私はいつも慎重なだけ。

そんな勢いで突き進んじゃっていいのかなって、心配になるんだ。









｢Aは早く結婚したいって思わないわけ？｣

｢···思うけど｣

｢じゃあ、いいじゃん｣

そしてまた空を見上げた裕太くんは、口を半開きにして花火を眺めはじめた。

私も真似して空を仰ぐ。

｢···結婚したら、何か変わるのかなあ｣

そんな独り言に、

｢変わらないんじゃない？
今と一緒だろ。｣

空を見上げたままの裕太くんは、そう答えてくる。

｢朝起きて、隣にAがいるのを見て、幸せな気持ちになって、
帰ってきたら、一緒に飯食って。
んで、一緒にテレビ見たり、話をしたりして、
夜になったら一緒に寝る、みたいな。｣

なんだ···、本当にいつもと同じじゃん。

結婚って、そんなに簡単なものだったっけ？








｢生活はいつもと同じ。
でも、重大な変化はある。
それは、Aが玉森Aになっちゃうってこと。｣

こちらを向いた裕太くんは、眩しそうに微笑みながら私の頭に手を置いた。

｢よろしくね、玉森Aさん。｣

その笑顔は、今まで見た笑顔の中で一番幸せそうに見えたから、不意打ちで涙腺が緩みかける。

···やばい。

あと何か感動的なことを言われたら、即、泣いちゃいそうなんだけど！

だけど裕太くんは、

｢まあ、緑ちゃん達とうちの家族がなんて言うかだけどね。｣

そんな現実的なことを口にして、あっさりと私の涙を引っ込めた。

｢でも、許しが出たら、
即、婚姻届出しちゃうけど。｣

｢出しちゃうの？｣

｢出すよ。
当たり前じゃん。｣

裕太くんは楽しそうに私のまとめ髪を弄ったり、髪留めを揺らしたりしながら、楽しそうに打ち明けてくれる。

｢だって早くAを俺と同じ名字にしたいし。｣

｢それだけ？｣

｢他にもまあ…、いろいろ？｣

チラリと私を見ては、

｢ほら、花火見ないと。｣

って、頭を掴むようにして前へ向かせてしまう。

なんだかね、今夜は不思議な気分なんだ。

２人でこんな風に花火を見て、結婚の話をしたりだとか。

なんだか、現実じゃないみたいだ。

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