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12月に入り、私の卒論は終わり、早めに提出できたんだけど。
裕太くんはかなり時間がかかるみたいで、もうまともに帰って来なくなった。
『A、悪いけど、着替えと何か食べるもの買ってきてくれる?』
っていう遠慮がちなLINEが届いて、すっかり暇になった私は、いつものように大学へ向かう。
いつも籠もってる部屋に顔を覗かせたら、そこはなかなか凄惨な光景が広がっていた。
段ボールを敷いて床で寝てる人と、死んだような目をして作業をしている人、
いつも賑やかな部屋がしんと静かで、ボードを切る音と誰かの溜息しか聞こえてこない。
裕太くんは部屋の隅に置かれたパイプ椅子に座って、そのまま眠っていたみたいだった。
部屋に入るのを迷っていたら、床で寝てた誰かがようやく目を覚まして、私をじっと見つめてくる。
…もしかして、山田くん?
なんか痩せちゃってない?
虚ろな目をした彼は、椅子で俯いて眠ってる裕太くんを揺すって起こしてくれた。
寝起きの不機嫌そうな顔のまま、裕太くんはゆっくりこっちに向かって歩いてくる。
私から着替えの袋だけを受け取ると、無言で部屋の奥から汚れた着替えを持って私に手渡してきた。
…だいぶ、機嫌が悪い感じ?
そのまま大量に買ってきたおにぎりを渡して帰ろうと思ってたのに、裕太くんは私の手首を掴むと、強引に廊下の奥へ私を連行した。
行先は薄暗い廊下の奥にある狭い飲食スペースで、裕太くんはドカリと大胆に薄っぺらいソファーベンチに腰掛けると、私に隣に座るように促してきた。
「食べよ、一緒に。」
もう話すのもしんどいのか、背もたれにぐったりともたれかかっては動こうとしない。
そのくせ、おにぎりの袋を外して渡してあげたら、余程お腹を空かせていたのかガツガツと食べ始めた。
一頻り食べた後は、またぐったりと背もたれにもたれかかっては、そのままぎゅっと痛いくらいに私の手を握り締めてくる。
「20日の夜には帰れるから。」
小さな声でそう告げると、また瞼を閉じてしまう。
「昨日、教授にダメ出しされちゃって。
設計と模型、一からやり直ししてるとこ。」
溜息混じりにそう話すその表情は、ぞくぞくするほど色気を帯びていて。
思わず私は、その頬に唇を乗せてしまった。
すぐに離したのに、裕太くんはそのまま私を引き寄せて、さっきみたいにガツガツしたキスをしてきては、
「なんか充電できたかも」
って、生意気な顔をして、またあの部屋に戻って行ってしまった。
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クッキーベル(プロフ) - 昨年のクリスマスからこの作品を今日までで一気読みさせていただきました!!すごく面白くて続きが気になります!!!更新大変だとは思いますが、これからも頑張ってください!!応援してます!! (2021年1月2日 19時) (レス) id: 456e770b4f (このIDを非表示/違反報告)
えり(プロフ) - 楽しみに更新待っていますね。^_^ (2020年7月28日 0時) (レス) id: 8591dd4797 (このIDを非表示/違反報告)
bakutan(プロフ) - こんばんは!この物語とても好きです!ゆっくりでも良いので更新再開してください!!楽しみに待ってます! (2020年6月3日 19時) (レス) id: dde750c273 (このIDを非表示/違反報告)
わかめ(プロフ) - えりさん» こちらも大変お返事が遅くなりまして!こちらも読んでくださってるとは、ありがとうございます。こちらは更にのんびり更新でやってますが、どうぞよろしくお願いしますm(__)m (2020年3月2日 1時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
えり(プロフ) - こんばんは!こちらも楽しみに読んでいます。めちゃくちゃ素の玉ちゃんが出てる感じでリアル感もあり楽しみです!ゆっくりご都合良い時に更新してくださいね^_^楽しみに待ってます。 (2020年1月25日 22時) (レス) id: 8591dd4797 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:わかめ | 作成日時:2019年10月6日 21時