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まだ夜の9時台だというのに、私達は部屋の明かりを消して早々に眠りに就いてしまった。

浅い眠りを繰り返して、微かな夢を見ながら。

シーツの擦れる音で、不意に浅い眠りから目を覚ます。

背中に触れる、毎晩感じている体温。

私を起こさないように、やんわりと腰に添えられた腕。

「…起きた?」

そう声を掛けたら、裕太くんは驚いたのか背中から顔を覗き込んでくる。

「起こした?」

「うん。」

「起きたら、Aがいないから」

そうだね。

私達はいつも2人で1人みたいに、朝も昼も夜も一緒で。

今夜みたいに1人で寝ることなんて、久しぶりだった。

きっと裕太くんがいないから、私はずっと浅い眠りを繰り返してたんだと思う。







「シンガポール最後の夜だね。」

急に、そんなことを言いたくなった。

真っ暗な部屋にエアコンの乾いた音だけが響いてて、少しだけ心細くなったんだ。

なのに裕太くんは、

「また年が明けたら、部屋を探しに来ることになると思うけどね。」

そんな現実的なことを言ってくる。

「今、何時?」

「夜中の2時」

そんなに時間が経ってたのか。

窓から見える夜景も、さっきより控えめに感じる。

そっか…、もうこの国の人たちも眠りに就いてる時間なんだ。








深夜に起こされてしまったことも手伝って、今夜の私は少しセンチメンタルになっていた。

裕太くんが背中にいることに我慢できなくて、くるりと体を反転させて、真正面から抱きついてみたり。

途端にふわりと香る裕太くんの香りと、いつもと違うシャンプーの香り。

ヤバいかも。

ムラムラするって、こういうことなのかもしれない。

今夜の私は、少し変だ。

Tシャツの布越しにその肩甲骨に触れれば、裕太くんの手のひらはやんわりと私の背中を撫でる。

たぶん、何も言わなくてもわかってくれてるよね?

今、私が裕太くんを欲しがっていることくらい。







ふと見上げたら、暗がりの中で目が合って、それだけでもう私の理性は崩落してしまった。

自分からキスをしたり、自分から服を脱がせたり、

こんな私に、裕太くんは幻滅するかもしれないね。

だけど今夜は、止まらなかった。

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クッキーベル(プロフ) - 昨年のクリスマスからこの作品を今日までで一気読みさせていただきました!!すごく面白くて続きが気になります!!!更新大変だとは思いますが、これからも頑張ってください!!応援してます!! (2021年1月2日 19時) (レス) id: 456e770b4f (このIDを非表示/違反報告)
えり(プロフ) - 楽しみに更新待っていますね。^_^ (2020年7月28日 0時) (レス) id: 8591dd4797 (このIDを非表示/違反報告)
bakutan(プロフ) - こんばんは!この物語とても好きです!ゆっくりでも良いので更新再開してください!!楽しみに待ってます! (2020年6月3日 19時) (レス) id: dde750c273 (このIDを非表示/違反報告)
わかめ(プロフ) - えりさん» こちらも大変お返事が遅くなりまして!こちらも読んでくださってるとは、ありがとうございます。こちらは更にのんびり更新でやってますが、どうぞよろしくお願いしますm(__)m (2020年3月2日 1時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
えり(プロフ) - こんばんは!こちらも楽しみに読んでいます。めちゃくちゃ素の玉ちゃんが出てる感じでリアル感もあり楽しみです!ゆっくりご都合良い時に更新してくださいね^_^楽しみに待ってます。 (2020年1月25日 22時) (レス) id: 8591dd4797 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:わかめ | 作成日時:2019年10月6日 21時

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