無敵のスピカ

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もっとゴネたいところだけど、もう俺も限界なわけで。

だけどワクワクが止まんなくて、

「俺もそう
付き合ってる子しか、触れねえわ」

とか、つい心にもないことを口にしてしまう。

「じゃあ、私も今夜は泊まれないかも」

Aもムキになって言ってくるし、

「じゃあ、俺もAとは一緒に寝れねーわ」

売り言葉に買い言葉で俺も、思ってもないことを返してしまう。









だけどお互い顔を見合わせて、吹き出してしまった。

「早く言えよ」

目の前にあるAの両頬を指でつまんだら、負けず嫌いのAは同じように俺の両耳をつまみ返してくる。

「宏光が先に言うべきじゃん」

「先に言った方に、何か得でもあるわけ？」

「あるよ
じゃあ、主導権握れるっていうのはどう？」

…本気？

主導権握っていいなら、俺から言ってやってもいいけど。

なのにまた、Aは変なことを言い出す。

「でもね、言われた方はもっといいことがあると思う」

「どんな？」

「死ぬほど幸せな気持ちになれると思う
一生この日のことを思い出して、幸せを反芻しちゃうような」

あまりに可愛らしい顔をしてそんなことを言うもんだから、もう折れた。









「好きだよ、A
もうずっと前から」

そう言ってやった途端に、Aは両手で顔を覆い隠してしまう。

しかも、耳まで真っ赤にして。

言ってほしかったんじゃないの？

なのに、何？

その少女みたいなリアクションは。

「A、今、幸せな気分に浸ってる？」

そう聞いたら、まだ顔を隠したまま、

「…浸ってる」

なんて、可愛らしい答えが返ってくる。

「見せろよ、顔」

その腕を取ろうとしたら、頑として拒否されてしまった。

それならそれで、もっとAを恥ずかしがらせてやろうと思った。

「俺、初めての告白なんだけど」

その言葉に驚いたのか、Aは指の隙間から目を覗かせてこちらを見てくるけど、目が合うとまた両手で隠してしまう。

「告白されたらAが、幸せな気持ちになるっていうから
幸せにしてやろうかと思って」









「A、こっち見て」

再びAの手に触れるけど、やっぱりAは頑固に俺を拒否してくる。

「やっぱ、今夜は無理」

とか今更、往生際の悪いことを言いだしたり。

「…は？約束違うんじゃない？」

そんなことを言いながら、Aの手にそっと唇を寄せた。

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