無敵のスピカ

DON'T WANNA DIE …りたわかめ…1 ページ37

今まで出会ってきた女の子と、Aは少し違っていた。

明らかに俺に気がある感じなのに、どんなに道筋をつけてやっても、Aは俺に「好き」とは言ってこない。

同じ会社の同僚として、出会ってもう２年。

俺らはずっと友達のまま。

俺はもう、焦がれるくらいにAのことが好きなのに。

Aは今の状態が余程心地いいのか、一歩たりとも一線を越えてこようともしない。

今までどこに行ったっけ？

Aに誘われてディズニーランドも行ったし、俺の趣味に付き合わせてサッカー観戦にも行った。

週に１、２回は仕事帰りに２人で飲むし、家飲みだってするし、俺の部屋に泊まって帰ることも多々。

…なのにAは過剰に身持ちが固くて、俺に指一本触らせないし、一緒に寝ることも許されない。

そういえば俺の部屋には簡単に泊まるけど、Aの部屋には入れてもらったこともないし。

今までの女の子達って、どんな感じだった？

いい感じに道筋をつけてあげたら、１ヵ月も経たない間に縋りつくようにして「好き」って告白してきたのに。

…てか俺、誰かに告白したことなんかあったっけ？

告白したいって思う前に、もう相手から「好き」って泣きながら懇願されるパターンだったから。

なのに、Aはこんな感じ。









今夜も２人、居酒屋のカウンターでくだらないことを話したり、

時折、余計なことを言って腕をバシバシ叩かれて、心の中で最大級にニヤけてみたり。

だけど俺からは、Aに触れることはできない。

触れたが最後、この関係が壊れてしまいそうな気がして。

だけど今夜は、違うから。

俺はこの曖昧な関係を、よく２年も我慢したと思う。

でも、もう限界が来てた。

「A」

そう名前を呼んだだけで、脳内が甘く痺れるし。

「何？」

Aがそう言ってこちらを向いただけで、愛しさが炸裂してどうにかなりそうなのに。









「俺がもう二度とAと会わないって言ったら、どうする？」

いつもの、冗談みたいなノリでそんな質問を投げかけた。

余裕のある表情を見せながら、Aの表情を観察して。

「何で？」

Aの目が少し潤んで、黒目が頼りなげに揺れる。

「彼女でもできた？」

「出来るわけないじゃん
いつもAと遊んでんのに、そんな暇なくね？」

「じゃあ、何で会わないとか言うわけ？」

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