無敵のスピカ

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「嘘つき。
彼女を作る気ないって言ってたじゃん！」

睨みつけるようにしてそう言えば、明らかに困り顔の彼は、

「仕方ねえじゃん。
そういうことになったんだから。」

簡単に開き直った。

「ちょっと話す？」

彼はそのまま私を置いて、先を歩き出す。

「飲みに行くんじゃなかった？」

「行けないだろ。
幽霊みたいにフラフラ歩いてるAを見たら。」

彼に関しては従順な私は、結局後をついて行くんだけど。









２４時間営業のカフェに入ってすぐ、彼はこんな話をしてきた。

「黙ってたけど俺、ずっと好きな子がいたんだよね。」

…何の話だよ、それ。

そんなこと今更言われても、納得できるわけないじゃん。

「大学に入ってからずっとだから、３年間くらい？
ずっと好きだったわけよ、その子のこと。」

悔しいことに、その彼女の話をする時の彼は、見たこともないほど幸せそうな顔をしていた。

…それだけでもう、鼻の奥がツンとしてくる。

もう…、さすがに泣いちゃいそうなんだけど。

だけど彼は、そんな私にお構いなしで話を続けていく。

「でもその子は、高校時代からずっと付き合ってた彼氏がいたわけ。
何度も告白したけど、ずっと断られっぱなし。」

それって、私と同じじゃん。

でも彼は、そんな片思いの相手をとうとう自分のものにしたわけで。

…私も、そんな日がくるのかな。

目の前で惚気話を繰り返している、この彼を自分のものにする日が。









「今年の夏に、彼氏と別れたんだって。
それで凝りもせず告白したら、ようやくＯＫをもらえたわけ。
でもまだ、お試し期間みたいなもんだけどね。
今はお互いのことを知っていく期間、みたいな。」

知らないよ、そんなの。

これ以上もう、聞きたくないんだけど。

「もちろん、手なんか出せないし。
キスすらまだ出来てないんだけど。」

彼女のことを思い出したように微笑んだ彼は、今まで見たこともないような幸せそうな顔をしていて、

やっぱり私は悔しくて泣きたくなった。

「うまくいくわけないじゃん、そんなの。」

そんな悪口を言ってしまう自分が、本当に嫌いだ。

だけど、それくらい言わないと、もう精神を保っていられないんだ。

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