無敵のスピカ

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おまけに彼はスキンシップが多い。

頬を指でつまんできたり、頭に手のひらを乗せてきたり、

調子のいい時は机の下で、ソファーに置かれた私の手に自分の手を自然に重ねてきたりもする。

これだけされて、好きになるなって方がおかしくない？

もちろん彼は私の気持ちを知ってて、こんなことをしているわけで。

最初に告白したのは、３ヵ月前。

「んー…、ごめん
今は彼女とか作りたくないから」

とか、手慣れた様子で断られて終了。

断っておきながら、

「でも、Aが嫌いってわけじゃないし、友達としては大好きだから
今まで通り付き合ってよ」

とか、無理難題を押し付けられた。

…まあ、ただ彼に好かれたいだけの私は、ワンチャンあると思って従順に従ってきたけど。

それも、そろそろ限界だ。









「Aは？そろそろ彼氏とかできた？」

私の髪を一束つまんでは、からかうような視線を送ってくる。

よく言えるよね、そんなこと。

３ヵ月前に私のことを振っておいて、「彼氏ができた？」なんて。

…できるわけないじゃん。

未だに私は、彼のことしか見てないのに。

「Aはさー、もっと色気が必要なんだって」

モブの１人にそんなことを言われても、怒る気にもならないくらい、私は凹んでいた。

「彼氏できた？」とか聞いてくる時点でもう、彼は私のことなんかまるで恋愛対象としては見てないわけで。

そう思ったら、その後も続くモブの失礼な言葉に反応することもできなかった。

どうせ…、どうせ私なんか北山宏光にフラれた女ですから！！！









「そう？Aって可愛いじゃん
うちの大学の友達もこの間店に来た時、Aのこと可愛いって言ってたけど？」

不意にそんな助け舟を出しては、チラリと私にドヤ顔を見せてくる。

悔しいけどそのドヤ顔にさえときめいてしまう私は、かなり重症で末期なヤバい状態だ。

「あ、そういえば、お客の中にいたっけ
Aのファンの男」

「いたいた
ドリンク注文にAを指名してくるイケメン」

「いつも１人で来てて、何かとAを呼びつける人でしょ？」

モブの会話を聞きながら、私は頭を抱える。

…それ、兄だから！

心配性の兄が、私の働いてる様子を見たくて、仕事帰りに立ち寄ってるだけだから！

でもそれを言ってしまうと、みんなにバカにされそうだから、知らないふりをしておく。

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