無敵のスピカ

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「だから頑張って同じ高校に入った
でも、宏くんが女の子といるところを見て、いちいち傷つく自分が嫌で
でも２学期に入る頃から、何とも思わなくなってきたんだよね
なんか、悟ったっていうか、諦めた、みたいな」

彼の背中がピクリと反応する。

それは、何か言い返したいことがあるのに、我慢してるって風に思えた。

「私は許嫁のこと、素直に受け入れてたけど、宏くんは嫌だったよね？
それが普通だと思う
…本当にごめんなさい」









「東京の大学に行くんでしょ？
彼女さんから聞いた
私のことは気にせず、一緒に住んだらいいと思う」

なのに、

「…俺には何も言う権利はないわけ？」

怒りを押し殺したような、彼の声が聞こえてきた。

「私は臆病者だから、宏くんの意見は聞きたくない
これ以上、傷つきたくないし
それに、宏くんに何か言われたらもう私は、怖くて自分の意見が言えなくなる」

そう言ったらさすがに、彼は黙り込むしかなくなる。

ごめんね、言いたい放題で。

でも、今まで私からは何も意思表示できなかったから。

許嫁が他の女の子とイチャついてるのを見て怒ることも、文句をいうこともできなかった。

ただ感情を殺して、息を止めてた。









「おじいちゃんには私から話しとく
今まで本当にごめんなさい」

彼の背中に向かって、深く頭を下げた。

彼には見えないだろうけど。

今、無性に泣きたいんだけど。

泣きまくって寝ちゃったら、明日の朝には楽になれてるかな。

「１分間だけ、そのままでいてくれる？
１分経ったら、帰ってくれていいから」

言いたいことは言えたと思う。

本当はね、もっともっと言い足りないけど。

そのままそっと足音を立てないように、公園から抜け出した。

そこからはもう…、あの御年始の夜のように猛ダッシュ。

私、足は速いんだよ、知らなかったでしょ？

…てか、私のこと、何も知らなかったでしょ？









しばらく走って後ろを振り返ってみたら、もう公園は見えなくなっていた。

もちろん、追いかけてくる彼の姿もない。

帰りながら私は、彼の連絡先を丁寧にブロックして、それから削除した。

１０年以上続いた私の仄かな片思いもこれで終わり。

今頃、彼もホッとしてるんじゃないかな。

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