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…しまった!

こんなこと言うつもりはなかったのに、北山くんがあんまり押してくるもんだから、つい口が滑っちゃった。

「…いつから?」

そう言いながら彼は、距離を詰めてくる。

ああ、もう本当のことを言っちゃうしかないのかな。

「…最初からです」

そう答えたら、彼は僅かに目を見開いた。

…終わった。

はい、これは完全に嫌われるパターンだ。

だって彼を騙してたんだから。









「マジで?」

ああ…、北山くんの声がだんだん低くなっていく。

これはもう、本気で怒らせちゃったかも。

「俺の職業聞いてきたよね?」

「だって、あの時の北山さんかなり警戒してたから
知らないふりしてあげた方がいいのかなって」

そう言い訳したら、ふっと鼻で笑われてしまった。

「もしかして、事前に霞さんに聞いてたとか?」

無言で頷いたら、途端に笑い出す彼。

いや、本当は遥か昔から知ってたけど。

今そんなことを言ったら嫌われてしまいそうで、つい頷いてしまった。

あれ…、でも私、彼に嫌われたかったんじゃなかったっけ?









「閉門しますよ」

突然、警備員さんに声をかけられて、私たちは現実に引き戻される。

彼は握りしめてた私のスマホを指さして、

「スマホ、開いて」

そう、偉そうに命じてきた。

素直にロックを解除してスマホを渡せば、彼は早業で何かを打ち込んで、

「これ、俺の番号だから」

ボソボソと低音で呟くようにそう言って、スマホを私の手のひらに握らせた。

「じゃあ俺、先に出るね」

私の返事も聞かずに、そのまま早足で門をくぐって行ってしまう。

私はずっと、さめざめと降る雨と、ビニール傘の彼の後ろ姿を呆然と眺めていた。









私も小扉が閉まる直前に、逃げるように外へ出た。

もう彼の姿はどこにもなく、私は大通りの明るい道を選んで歩き出す。

終電ももうないし、これから1時間近くかけて歩いて帰るしかない。

小さな折り畳み傘を差して歩きながら、スマホを開いてみる。

…やば。

本当に番号が打ち込まれてる。

『北山さん』、他人行儀にそう名前を入れて保存した。

…マジか。

出会って1年、どうやら私達はようやく連絡先交換というものをしたみたいだ。

てか、怒ったんじゃなかった?

私が嘘をついてたことに。

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18rf(プロフ) - わかめさん» わあ!返信有難うございます!!なるほど、そうだったんですね!!主人公ちゃんの気持ちすごいわかるなあ、北山さんに触れたい!!って毎回なってます笑これからの展開たのしみにしてますね!! (2019年7月30日 0時) (レス) id: 6b95d259ee (このIDを非表示/違反報告)
ふう(プロフ) - わかめさん» 返信ありがとうございます!沢山連載あるのに更新ありがとうございますTT (2019年7月22日 23時) (レス) id: 24794ead76 (このIDを非表示/違反報告)
わかめ(プロフ) - ふうさん» コメントありがとうございますm(__)mそんなこと言っていただいてうれしいです(/ω\)今夜も更新しようと頑張ってますが、もう既に眠いのでくじけるかもしれませんが、どうぞよろしくお願いしますm(__)m (2019年7月21日 22時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
わかめ(プロフ) - アップルさん» そんなことと言っていただいて、ありがとうございます!ご褒美だとか、本当にもったいないくらいです。夜桜と北山くん、かなり素敵だと思われます!どうぞこれからもよろしくお願いしますm(__)m (2019年7月21日 22時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
わかめ(プロフ) - 18rfさん» はじめまして、コメントありがとうございます。毎回気になるところで終わりますよねwでもこれ、実は自分のためなんです。次を書きたくなるようなところで終わらせておかないと、次に書く気がなくなっちゃうので(/ω\) (2019年7月21日 22時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:わかめ | 作成日時:2019年6月25日 22時

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