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その夜、私は終電近くになるまで残業をしていた。
その日は夜から雨になり、自転車で来てた私は仕方なく電車で帰ることにしたんだけど。
いつもは大学の裏通りに出る門から帰るのに、その日はわざと遠回りして正門から帰ることにした。
正門の脇にはちょっとした桜並木があるから。
まだ五分咲きくらいの桜を見たくて、傘をさして正門へ向かう。
そこまでの道すがら、朋と電話をしながら。
「聞いてないんだけど
篠原さんと付き合ってるって?」
『だって、言い出しにくいじゃん
Aは北山断ちしてるとこだし』
「私に内緒で、あの集まりにも参加してたんでしょ?」
『でも北山くんは来てなかったよ
最近忙しいっぽい』
やっぱり朋は霞さんと同じことを言う。
『お花見の話、霞さんから聞いた?』
「聞いた
でも行かないよ?」
『こんな機会でもないと、Aは花見にも行かないんじゃん』
「これから花見するとこ
正門のとこに桜並木があるし」
朋はそんな私の返事に呆れてたけど、
『本当においでよ』
って、霞さんみたいにしつこく誘ってくるから、早めに電話を切り上げた頃、
私はようやく桜並木に着いた。
予想通りまだ桜は五分咲きで、蕾や花びらをスマホのライトで照らしながら、満開になる日を勝手に予想していた。
「…Aちゃん?」
不意に背後から声をかけられて、背筋がビクッと嫌な感じに反応する。
だって時刻は0時前。
ここまで来る途中、誰ともすれ違わなかったのに。
「Aちゃん?」
もう一度名前を呼ばれて、恐る恐る振り返った。
だってその声が、聞き慣れた北山くんの声によく似ていたから。
「やっぱりAちゃんじゃん」
ビニール傘をさした人影が、早足で近づいてくる。
…嘘だよ。
こんな場所にいるはずがない。
なのに彼は、
「この近くで飲んでて、ここの前を通りかかったら小扉が開いてたから
桜が見えたし、Aちゃんがいたりしてとか思って、入って来たんだけど」
なんて、まるで昨日も会ってたかのようなノリで話しかけてくる。
なんで今日に限って私は、こんな冴えない格好をしてるんだろう。
着古したパーカーにジーンズの、部屋着みたいな服を着て。
目の前の北山くんは、お洒落で高そうな服を着てるのに。
「やっぱり、また会うことになったじゃん」
そう言って、大人びた微笑みを浮かべる彼が、私には心底恐ろしく見えた。
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18rf(プロフ) - わかめさん» わあ!返信有難うございます!!なるほど、そうだったんですね!!主人公ちゃんの気持ちすごいわかるなあ、北山さんに触れたい!!って毎回なってます笑これからの展開たのしみにしてますね!! (2019年7月30日 0時) (レス) id: 6b95d259ee (このIDを非表示/違反報告)
ふう(プロフ) - わかめさん» 返信ありがとうございます!沢山連載あるのに更新ありがとうございますTT (2019年7月22日 23時) (レス) id: 24794ead76 (このIDを非表示/違反報告)
わかめ(プロフ) - ふうさん» コメントありがとうございますm(__)mそんなこと言っていただいてうれしいです(/ω\)今夜も更新しようと頑張ってますが、もう既に眠いのでくじけるかもしれませんが、どうぞよろしくお願いしますm(__)m (2019年7月21日 22時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
わかめ(プロフ) - アップルさん» そんなことと言っていただいて、ありがとうございます!ご褒美だとか、本当にもったいないくらいです。夜桜と北山くん、かなり素敵だと思われます!どうぞこれからもよろしくお願いしますm(__)m (2019年7月21日 22時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
わかめ(プロフ) - 18rfさん» はじめまして、コメントありがとうございます。毎回気になるところで終わりますよねwでもこれ、実は自分のためなんです。次を書きたくなるようなところで終わらせておかないと、次に書く気がなくなっちゃうので(/ω\) (2019年7月21日 22時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:わかめ | 作成日時:2019年6月25日 22時