花朝月夕

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「大西先生って？」

「うちの大学の講師の先生
今は別の大学で助教授になってる」

「へえ…、何年くらい付き合ったの？」

旦那さんは、今度は私に質問の矛先を向けてくる。

こんな話したくないのに。

北山くんは寝てるから聞いてないだろうけど。

だから、私は思い切って話をぶった切ってみることにした。

「旦那さんが言いたいのは、北山さんのことを好きになるなってことですよね？
大丈夫です
さすがにそれくらいわかります」

だけど２人とも、気まずそうな顔をして黙り込んでしまう。

「前に霞さんにも言われましたし、私もそういうつもりはないので
それでこういう集まりも、今まで遠慮してきたので」

なんだか、泣きそうになってきた。

自分の口から出た言葉で、どんどん自分が傷ついていく感じで。









「今日も、もう帰った方がいいですよね？」

そう言った途端に、２人は必死で引き止めてくる。

「そういうんじゃないから」

「Aちゃんは何も悪くないんだって」

いやいや、元々私が悪いわけで。

北山担なのを勝手に隠してここに忍び込んで、２人に心配かけちゃって引っ掻き回すようなことして。

逆に申し訳ないんですけど。

「なんか２人には迷惑かけてしまって、ごめんなさい」

深々と頭を下げたら、２人とももう何も言わなくなった。

２人が北山くんを守りたいって気持ちは、痛いほどわかるから。

だって私だって北山くんを守りたいから。









朋にチラリと目をやったら、篠原さんといい感じに盛り上がっていて。

それでも私が席を立ったら、

「帰る？」

って、話を中断させてまで席を立つ。

「えー、朋ちゃん帰っちゃうの？」

篠原さんが朋を引き止めるから、変な雰囲気になってしまい。

「朋はもうちょっと飲んでてもいいよ
私は先に帰ってるから」

そんな空気の読めない私を、周りの人々はまるで変人でも見るかのような目で見てくるから、もういたたまれなくなってきた。

だけどそんな中、北山くんだけは幸せそうな顔をして眠りについている。

そこだけがまるでオアシスのように感じた。

さようなら。

１ファンの私に、こんな濃厚な思い出をありがとうございました。









そっと玄関まで出たら、霞さんと旦那さんが見送りに来てくれた。

２人とも気まずそうに、

「Aちゃん、ごめん」

「もっといてくれてよかったのに」

なんて言ってくれるけど、逆に申し訳ない。

一番の罪人は、嘘つきの私なんだから。

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