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「そうなんだ?」
「昔は、課内の忘年会や新年会も来たがらなかったって聞いたんですけど」
…確かに。
裕太はああいう大勢でわいわいするような場面があまり好きじゃなくて、何かと理由を付けてはサボりがちだったよね。
それが今では普通に参加してるってことは、やっぱりもう裕太の中身は別人になっちゃってるんだな。
「A先輩は、玉森くんとあまり親しくなかったんですか?」
不意にそう聞かれて、心臓が嫌な感じにドキリと鳴った。
どう答えたらいいんだろう。
どれが正解かはわかんなくて、つい勢いで、
「同期だから、普通に話したりする程度かな」
なんていう、当たり障りのない回答をしてしまった。
「玉森くんって、彼女いたんですかね?」
今度は声を潜めて、好奇心いっぱいな目をして、志穂ちゃんはそんなことを聞いてくる。
「…うーん、知らないなあ」
なんて答えながら、目が潤んできた。
もうこれ以上、玉森くんの話は聞きたくない。
そんなことを思っていたタイミングでランチが運ばれてきて、その話題はなようやく中断した。
ランチ終わりに帰社してる途中も、志穂ちゃんは裕太の話題をやめてくれない。
適当に生返事を繰り返しながら私は、異動願いのことばかりを考えていた。
大阪とかどうなんだろう。
関西弁はできないけど、食べ物は美味しいし、人も優しそうだし。
私も、全く新しい人生を始めた方がいいのかもしれないな。
午後からの仕事で、課長から急に、
「玉森がシステムの使い方がわかんないみたいだから、教えてやって」
とか言い渡されてしまって、私はわかりやすく顔を顰めてしまった。
「そんな面倒な顔すんなって
宮田は今、A社に出かけてていないんだから」
そう言われたら仕方ない。
私の中にある全ての感情に分厚いシャッターを閉めて、ご丁寧に鍵を何重にもかけて、彼の席へ向かった。
彼はパソコンに向かって格闘中で、その背後に立った私は、
「どこが分からない感じですか?」
至って事務的に声をかけた。
彼の画面を覗き込んでみるけど、何も入力されてないところを見ると、多分何もわかんないんだろうな。
丁寧に教えてあげるけど、彼からはあまり反応はない。
素直に従って入力できるようになったけど、私一人がしゃべってて、彼は相槌を打つ程度。
…本当に別人なんだな。
大体教え終わった時、裕太は席を立って私に頭を下げた。
「ありがとうございました」
って、他人行儀に。
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りたわかめ(プロフ) - くるりさん» まだ読んでいただいてたらありがたいです。地味に更新しました(/ω\) (2021年6月15日 22時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
くるり(プロフ) - キュンキュンしたり切なくなったりしながら読ませていただいてます!これからの展開がとても楽しみです。更新大変だと思いますが無理せず頑張ってください!応援してます! (2020年8月19日 9時) (レス) id: e6324db40e (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - ゆりかさん» こちらこそ読んでくださってありがとうございます!実は本当はもっと悲しい設定にする予定だったんですが、書いてるうちにこんな感じに仕上がってしまいましたwこれからもどうぞよろしくお願いします<(_ _)> (2020年3月17日 2時) (レス) id: 4a0ecf03f1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりか(プロフ) - いつもいつも楽しく読ませて頂いてます!前の記憶を覚えていないもどかしさであったり、悲しいところもあったり、キュンキュンしたり、本当に大好きなお話です!本当に面白いです!次回の更新も楽しみにしています(^^) (2020年3月9日 5時) (レス) id: 6a4601e7a5 (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - みなさん» お返事遅くなりまして、申し訳ございませんでした!記憶喪失になっても、本能で好きになってしまう的な話が書きたくて(/ω\*) (2020年1月13日 21時) (レス) id: 4a0ecf03f1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:わかめ | 作成日時:2019年10月27日 16時