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2019/04/01 ページ8

入社式が行われた今日、夕方になって、配属される新人達が挨拶にやってきた。

うちの部署には4人の新入社員が入ってくるらしい。

その中の1人に裕太の姿を見つけた。

ああ…、本当に来ちゃったんだ。

神妙な面持ちで辺りを見渡していた裕太は、私と目が合って、

しばらくフリーズしたあと、気まずそうに目を逸らした。









新入社員が帰って行ったあと、

私と宮田くんが課長に呼び出された。

「2人には、新人の指導係をお願いしたいんだけど」

その言葉に、宮田くんはチラリと私に視線を送ってくる。

「新人の飯塚志穂と、玉森の2人なんだけど、
どっちがいい?」

…って、何?その聞き方。

「俺的には、Aに玉森を担当してもらうのがいいと思ってる
Aは同期だから、玉森のこともよく知ってるだろうし
玉森もああいう記憶喪失とかいうセンシティブな状態だから、気の回る女性の方がいいのかなと思って」









…無理だって。

さっきの裕太の表情を、脳内再生してみる。

気まずそうな顔をしてたってことは、私とは顔を合わせたくなかったんだろう。

「課長!俺が玉の担当じゃダメですか?」

宮田くんのその言葉に、課長はしばらく考え込んでたけど、

「異性の指導係って、なかなか難しいですし
それに玉なら俺、仲が良かったから、性格も知り尽くしてるんで」

その一言で、課長も納得してくれた。

「いいけど、玉森は元の玉森とは違うからな?」

「そうなんですか?」

「会ったらわかる」

課長はそう言い残して、会議室を出て行ってしまうから。

残された私達は顔を見合わせる。









「宮田くん、ありがとね
指導係、代わってくれて」

「だってAちゃん、辛そうな顔をしてたから」

こういう時、宮田くんの優しさが本当に身に染みる。

私が担当になったら、裕太も気まずいだろうし、私は精神を病んじゃいそうだから。

このまま離れてた方がいいんだよ、きっと。

「それにしても、玉が別人みたいになってるって本当かな
なんか信じられないんだけど」

そんな宮田くんの言葉を聞きながら、私は変に確信していた。

もう、裕太の記憶は戻らないんだろうな、ってことに。

別人のようになった裕太なんて、想像もつかない。

裕太が正式に配属されてくるのは1ヶ月後の、GW明け。

その頃までには私も、心の準備をしておかなければならない。

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りたわかめ(プロフ) - くるりさん» まだ読んでいただいてたらありがたいです。地味に更新しました(/ω\) (2021年6月15日 22時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
くるり(プロフ) - キュンキュンしたり切なくなったりしながら読ませていただいてます!これからの展開がとても楽しみです。更新大変だと思いますが無理せず頑張ってください!応援してます! (2020年8月19日 9時) (レス) id: e6324db40e (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - ゆりかさん» こちらこそ読んでくださってありがとうございます!実は本当はもっと悲しい設定にする予定だったんですが、書いてるうちにこんな感じに仕上がってしまいましたwこれからもどうぞよろしくお願いします<(_ _)> (2020年3月17日 2時) (レス) id: 4a0ecf03f1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりか(プロフ) - いつもいつも楽しく読ませて頂いてます!前の記憶を覚えていないもどかしさであったり、悲しいところもあったり、キュンキュンしたり、本当に大好きなお話です!本当に面白いです!次回の更新も楽しみにしています(^^) (2020年3月9日 5時) (レス) id: 6a4601e7a5 (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - みなさん» お返事遅くなりまして、申し訳ございませんでした!記憶喪失になっても、本能で好きになってしまう的な話が書きたくて(/ω\*) (2020年1月13日 21時) (レス) id: 4a0ecf03f1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:わかめ | 作成日時:2019年10月27日 16時

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