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無心で荷物を整理している最中、志穂ちゃんからかかってきた電話で我に返った。

『こんばんは』

余裕たっぷりな志穂ちゃんの声で、一気に現実に引き戻される。

『今、玉ちゃん帰りましたから』

そう言われて気付いた。

窓の向こうはもう既に真っ暗になっていることに。

『多分、今から玉ちゃんはそっちに行きますよ』

私は何も返事をしない。

というより、何て言葉を返していいのかすら思いつかない。

『玉ちゃんには、ちゃんと伝えておきましたから
今日を最後に、もう二度と会わないでいてくれますか?』

それだけ言って、電話は切れた。

志穂ちゃんが何をしたかったのかは、結局よく分からないままだけど、きっと私達は一緒にいない方がいい。









その電話から30分ほど経った頃、部屋のベルが鳴らされた。

インターホンの画面には、作り笑顔の裕太が映っていた。

とにかく、冷静にならなきゃ。

感傷的にならないようにしないと、2号に私の気持ちを読まれてしまう。

引っ越しの準備で散らかった部屋を見て、2号は驚いた顔をして、それきり黙り込んでしまった。

だから私から、本題に触れる。

「志穂ちゃんに会った?」

2号はじっと私の目を見てくるけど、何も言ってこない。

「志穂ちゃんに聞いたんだよね?」

「…聞いた」

「あれ、本当だから」

そう告げたら、2号は苦しそうに目を伏せた。








「飯塚さんに…、何か言われた?
条件を飲まないと、俺に何かするとか」

「言われたよ」

「そんなの気にしなくていいから
Aの本当の気持ちを聞かせてよ」

「私は、ただ楽になりたいだけ」

「楽になる?」

「苦しいから、いつも
…2号のことは好きだよ
でも、2号を好きだと思うたびに、1号に申し訳なく思う
2号と一緒にいても、罪悪感でいつも苦しい」

これが、本当の気持ちだから。

だから、ちゃんと私の口から言わせてほしい。

「私達は、別れた方がいいと思う」

なのに2号はすぐに言い返してくる。

「何の為に?」

「私達が付き合ってても、いいことなんてないよ
私は左遷されるし、これ以上一緒にいたら、裕太の人生を壊しちゃうかもしれないし」

「関係ないって、そんなの」

2号の語気が荒くなるけど、私は目を瞑って一気に言い上げた。

「私は罪悪感から早く逃げたいだけ
お願いだから、もう私のことは1人にしてほしい」

2019/8/30→←前ページ



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りたわかめ(プロフ) - くるりさん» まだ読んでいただいてたらありがたいです。地味に更新しました(/ω\) (2021年6月15日 22時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
くるり(プロフ) - キュンキュンしたり切なくなったりしながら読ませていただいてます!これからの展開がとても楽しみです。更新大変だと思いますが無理せず頑張ってください!応援してます! (2020年8月19日 9時) (レス) id: e6324db40e (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - ゆりかさん» こちらこそ読んでくださってありがとうございます!実は本当はもっと悲しい設定にする予定だったんですが、書いてるうちにこんな感じに仕上がってしまいましたwこれからもどうぞよろしくお願いします<(_ _)> (2020年3月17日 2時) (レス) id: 4a0ecf03f1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりか(プロフ) - いつもいつも楽しく読ませて頂いてます!前の記憶を覚えていないもどかしさであったり、悲しいところもあったり、キュンキュンしたり、本当に大好きなお話です!本当に面白いです!次回の更新も楽しみにしています(^^) (2020年3月9日 5時) (レス) id: 6a4601e7a5 (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - みなさん» お返事遅くなりまして、申し訳ございませんでした!記憶喪失になっても、本能で好きになってしまう的な話が書きたくて(/ω\*) (2020年1月13日 21時) (レス) id: 4a0ecf03f1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:わかめ | 作成日時:2019年10月27日 16時

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