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「なんか、変な夢を見ちゃったから」

ようやく体を離してくれた裕太は、少し恥ずかしそうに目を伏せた。

「怖い夢だった?」

そう訊ねたら、

「もう忘れた」

と言って、可愛らしく微笑んだ裕太は、

「少しだけここにいていい?
朝になったら帰るから」

そんな狡い言い方をして、部屋に入ってきた。






思えば、今日は裕太とちゃんと話してなかったな。

だから、異動のことも言えてないわけで。

でも裕太の表情が冴えないのはきっと、もう既に異動のことを知ってしまったからなんだろう。

「異動のこと、聞いた?」

「…聞いた。」

「台湾だっていうのも?」

「知ってる
その原因が飯塚さんだってことも。」

なんだ、全部知っちゃってんじゃん。

でも裕太が知ってるってことは、課内中に知れ渡っちゃってるのかもしれないな。

「誰から聞いた?その話」

「宮田が教えてくれた」

そうだった、宮田くんは課内の女子社員とも仲良しだし、情報網がハンパないんだよね。

「どこまで聞いてる?」

「新入社員が、教育担当の先輩を取締役の伯父の力を利用して海外に飛ばしちゃったってとこまで」

「え?そんなことまで伝わってるの?」

「一応、その理由が俺だってことまでは伝わってないっぽい。
Aが気に入らないからパワハラされたことにして、小父さんに我儘言った新入社員、みたいな噂になってるっけど。」

「それって、完全に志穂ちゃんが悪者になっちゃってんじゃん」

「だって、その通りなんだから仕方なくない?」

「裕太ってさ、志穂ちゃんには冷たいよね」

少し強張ってるその綺麗な横顔の、その陶器のような頬に触れただけで、

裕太はすぐにこちらに視線を向けて、柔らかく微笑む。

「当たり前じゃん
A以外の女の子に優しくする意味なくない?」

そんな可愛らしい顔をして、言ってることはなかなか毒々しい。







「で、どうするの?
行くつもり?台湾」

「断れないんだって
断ったら、倉庫に飛ばされるみたい」

「宮田が、Aの異動は不当だって署名集めて上に訴えれば?とか言ってたけど」

「いいよ、そういうのは
横尾さんが1年で帰れるようにしてやるって、言ってくれてるから」

「そんなこと出来んの?
Aの異動も阻止できないのに」

珍しく冷たい目をした裕太は、じっと私を見据えてくる。








なんだか今日は、なかなか夜が明けないな。

2019/7/4→←2019/07/03



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りたわかめ(プロフ) - くるりさん» まだ読んでいただいてたらありがたいです。地味に更新しました(/ω\) (2021年6月15日 22時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
くるり(プロフ) - キュンキュンしたり切なくなったりしながら読ませていただいてます!これからの展開がとても楽しみです。更新大変だと思いますが無理せず頑張ってください!応援してます! (2020年8月19日 9時) (レス) id: e6324db40e (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - ゆりかさん» こちらこそ読んでくださってありがとうございます!実は本当はもっと悲しい設定にする予定だったんですが、書いてるうちにこんな感じに仕上がってしまいましたwこれからもどうぞよろしくお願いします<(_ _)> (2020年3月17日 2時) (レス) id: 4a0ecf03f1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりか(プロフ) - いつもいつも楽しく読ませて頂いてます!前の記憶を覚えていないもどかしさであったり、悲しいところもあったり、キュンキュンしたり、本当に大好きなお話です!本当に面白いです!次回の更新も楽しみにしています(^^) (2020年3月9日 5時) (レス) id: 6a4601e7a5 (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - みなさん» お返事遅くなりまして、申し訳ございませんでした!記憶喪失になっても、本能で好きになってしまう的な話が書きたくて(/ω\*) (2020年1月13日 21時) (レス) id: 4a0ecf03f1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:わかめ | 作成日時:2019年10月27日 16時

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