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志穂ちゃんは、

「わかりました」

とだけ告げて、それきり何も話さなくなった。








昼休みが終わる直前、裕太からLINEが入る。

『何か言われた?』

チラリと振り返ったら、裕太と目が合った。

でも隣の席には志穂ちゃんがいるわけで。

とりあえず、

「大丈夫だよ」

と送信しておく。

出来れば、この状況は避けたかったな。

職場内三角関係だとか。







仕事終わり、裕太からLINEが届く。

『今日も、家に行っていい?』

つい、口元が緩んでしまった瞬間、隣から強烈な視線を感じた。

視線の先は当然、志穂ちゃんなわけで。

彼女は大きく音を立ててファイルを閉じると、無言でそのまま席を立ってしまった。








裕太と会社のエントランスで待ち合わせて、行先も決めないまま適当に歩き出す。

だけど、頭の中には志穂ちゃんのことばかりが浮かんできて、どうしても消えてくれない。

そんな時、裕太が不意に、

「今日は、俺の部屋に来る?」

そんなことを言ってきた。









久しぶりに裕太のマンションに来た。

1号は7階の角部屋に住んでたけど、2号は3階の真ん中の部屋だった。

間取りは同じはずなんだけど、やっはり微妙に違う。

そして何より驚いたのは、2号の部屋には何もなかったことだ。
テレビもないし、家具もない。

「ねえ、どうやって生活してんの?」

って聞いてしまうほど。

ワンルームの部屋には、真っ白なベッドが一台あるきり。

そのベッドに腰かけたら、そのスプリングの感触に不思議な感覚に陥った。

だって1号は固めの高反発のベッドだったのに、このベッドは沈み込んでしまうくらいに柔らかいベッドだったから。








「2号になってから手に入れたものだけ、この部屋に持ってきたんだけど
1号のものは全部実家に置いてきたから、これだけになっちゃった」

隣に腰かけてきた裕太は、そう言っては寂しげに目を伏せる。

そうか、

今の裕太は、前の裕太とは違う人間なんだ。

硬めのマットレスが好きな1号と、柔らかいマットレスが好きな2号。

同じ体なのに、中身はまるで違うんだ。

そのまま本能的に裕太の首を引き寄せて、速攻で唇を奪った。

何故だが、目の前の2号が愛しくて愛しくて、たまんなくなったから。

もしかしたら私は、1号より2号の方が好きなのかもしれない。

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りたわかめ(プロフ) - くるりさん» まだ読んでいただいてたらありがたいです。地味に更新しました(/ω\) (2021年6月15日 22時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
くるり(プロフ) - キュンキュンしたり切なくなったりしながら読ませていただいてます!これからの展開がとても楽しみです。更新大変だと思いますが無理せず頑張ってください!応援してます! (2020年8月19日 9時) (レス) id: e6324db40e (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - ゆりかさん» こちらこそ読んでくださってありがとうございます!実は本当はもっと悲しい設定にする予定だったんですが、書いてるうちにこんな感じに仕上がってしまいましたwこれからもどうぞよろしくお願いします<(_ _)> (2020年3月17日 2時) (レス) id: 4a0ecf03f1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりか(プロフ) - いつもいつも楽しく読ませて頂いてます!前の記憶を覚えていないもどかしさであったり、悲しいところもあったり、キュンキュンしたり、本当に大好きなお話です!本当に面白いです!次回の更新も楽しみにしています(^^) (2020年3月9日 5時) (レス) id: 6a4601e7a5 (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - みなさん» お返事遅くなりまして、申し訳ございませんでした!記憶喪失になっても、本能で好きになってしまう的な話が書きたくて(/ω\*) (2020年1月13日 21時) (レス) id: 4a0ecf03f1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:わかめ | 作成日時:2019年10月27日 16時

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