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なんとか適当に片付けて、部屋に招き入れたけど、
部屋に入って来た裕太は、なんだか様子がおかしい。
入り口で立ち止まったまま、まるで金縛りにでもあってるかのように固まってしまっている。
だけど気持ちが昂って仕方のない私は、すぐにテラスに続くガラス戸を開け放して、手招きをした。
ゆっくりと裕太がテラスに出てくる。
真っ暗だったテラスの灯りを付けた途端、裕太は顔を真っ青にしてその場に座り込んでしまった。
「大丈夫?
飲み過ぎた?」
何も答えてくれない裕太を引きずるようにして立たせて、テラスの隅に置いてたガーデンチェアに座らせて気付いた。
裕太が小刻みに震えていることに。
「…寒い?」
そう聞いたら、裕太は小さく首を振って、
「ここなんだけど…」
小さな声で、そう教えてくれた。
「夢に出てきてた場所、ここだわ
屋上じゃなくて、テラスだったんだ、ここ」
やっぱりだ。
2号の見ていた夢は、1号の記憶そのものなんだ。
うれしいはずなのに、全然笑えない。
うれしい気持ちと寂しい気持ちがぐるぐると掻き混ぜられてるような、変な感覚に支配されて、
結果、私は無表情のまま。
裕太は苦しそうな目をして、こんなことを訊ねてくる。
「もしかしてAさんは1号とよくここで遊んでた?」
「うん」
「バーベキューをしたり、手持ち花火をしたり」
「うん、してた」
「手を繋いだり、キスしたりも?」
それに答えたらもう、私達は付き合ってたって白状してしまうようなもので。
記憶のない人に「私達、付き合ってたんだよ」っていう事実を押し付けるのは、フェアじゃないって思うから。
やっぱり私は、その質問には答えないでおく。
情緒不安定な私達の会話は、ちゃんと噛み合っているんだろうか。
ふわふわしたりキューっと胸が締め付けられたり、私の心と身体はおかしい。
「Aさんは、俺の記憶が戻ればいいって思ってる?」
そう訊ねてきた裕太の声は、微かに震えていて、
「何でそんなこと聞くの?」
そう答えた私の声も震えていた。
「1号が戻ってきてくれたら、うれしい?」
そう聞かれた途端、不意に涙が頬に零れた。
何で裕太はそんなこと聞くんだろう。
こんなに苦しそうな顔をした裕太は、今まで一度も見たことがない。
「1号が戻ってきたら、もう俺、消えてなくなっちゃうのかな」
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りたわかめ(プロフ) - くるりさん» まだ読んでいただいてたらありがたいです。地味に更新しました(/ω\) (2021年6月15日 22時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
くるり(プロフ) - キュンキュンしたり切なくなったりしながら読ませていただいてます!これからの展開がとても楽しみです。更新大変だと思いますが無理せず頑張ってください!応援してます! (2020年8月19日 9時) (レス) id: e6324db40e (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - ゆりかさん» こちらこそ読んでくださってありがとうございます!実は本当はもっと悲しい設定にする予定だったんですが、書いてるうちにこんな感じに仕上がってしまいましたwこれからもどうぞよろしくお願いします<(_ _)> (2020年3月17日 2時) (レス) id: 4a0ecf03f1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりか(プロフ) - いつもいつも楽しく読ませて頂いてます!前の記憶を覚えていないもどかしさであったり、悲しいところもあったり、キュンキュンしたり、本当に大好きなお話です!本当に面白いです!次回の更新も楽しみにしています(^^) (2020年3月9日 5時) (レス) id: 6a4601e7a5 (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - みなさん» お返事遅くなりまして、申し訳ございませんでした!記憶喪失になっても、本能で好きになってしまう的な話が書きたくて(/ω\*) (2020年1月13日 21時) (レス) id: 4a0ecf03f1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:わかめ | 作成日時:2019年10月27日 16時