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2019/06/21 ページ28

結局、押し切られた形になって、私達は2人で出かけることになった。

金曜日の夜、仕事終わりに待ち合わせして、会社から少し離れた店へわざわざ電車に乗って。

もちろん、志穂ちゃんには内緒で。

それだって裕太が、

「あの子には絶対に気付かれないようにしよ
あの子、本当に面倒だから」

裕太が本当に嫌そうな顔をしてお願いしてくるから、断れなくなった。

例え中身が2号になってても、私はやっぱり裕太に弱い。









裕太が予約したという店は、会社から3駅ほど離れた場所にあるお洒落な居酒屋さんだった。

店が小さいからあまりうるさくないし、奥まった場所にあるせいかとても落ち着いた雰囲気で。

「実はここ、宮田に教えてもらったんだよね」

あっさり種明かしをしてきた裕太は、会社とは全然違うリラックスした表情でメニューのページをめくる。

会社ではいつもすました顔をしてるのに、今はユルユルな可愛い顔をして、

「ね、だし巻き頼んでいい?」

とか聞いてくる。

だけど驚いた。

1号の裕太も好きだったんだよ、それ。

「だし巻き好きだったんだ?」

「なんか、前に宮田と飲みに行った時に食べたら美味しかったから」

この微笑み方。

それも1号と全く同じで。

1号と同じ仕草を見せられるだけで、私の胸はキリキリと痛くなる。









「だし巻きね、1号も好きだったよ」

そう教えてあげたら、目を丸くした裕太は、

「何で知ってんの?」

何故か疑るような視線を私に向けてくる。

ああ、そうだっけ。

2号は、私と1号との関係を疑ってたんだ。

「よく飲みに行ってたからね」

そう教えてあげたら、少し安心したようにまたメニューに視線を落とすその仕草も、

昔の裕太そのものだった。

さっきから2号は、1号が私だけにしか見せてなかった表情ばかり見せてくる。

本当は「玉森くん」じゃなくて、「裕太」って昔みたいに呼びたい。

だけどこんなに昔の裕太そのものなくせに、中身は全然違う誰かなんだ。









その日の私は、少しだけ酒量をセーブしていた。

だって、酔ったら余計なことを告白してしまいそうだし。

なるべく冷静でいられるようにと思って。

なのにそれに反比例して、裕太の飲むペースは上がっていく。

トロンとした可愛らしい目をして、

「Aさんといると幸せ」

とか、しみじみ呟いては、じっとこちらを見つめてきたり。

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りたわかめ(プロフ) - くるりさん» まだ読んでいただいてたらありがたいです。地味に更新しました(/ω\) (2021年6月15日 22時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
くるり(プロフ) - キュンキュンしたり切なくなったりしながら読ませていただいてます!これからの展開がとても楽しみです。更新大変だと思いますが無理せず頑張ってください!応援してます! (2020年8月19日 9時) (レス) id: e6324db40e (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - ゆりかさん» こちらこそ読んでくださってありがとうございます!実は本当はもっと悲しい設定にする予定だったんですが、書いてるうちにこんな感じに仕上がってしまいましたwこれからもどうぞよろしくお願いします<(_ _)> (2020年3月17日 2時) (レス) id: 4a0ecf03f1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりか(プロフ) - いつもいつも楽しく読ませて頂いてます!前の記憶を覚えていないもどかしさであったり、悲しいところもあったり、キュンキュンしたり、本当に大好きなお話です!本当に面白いです!次回の更新も楽しみにしています(^^) (2020年3月9日 5時) (レス) id: 6a4601e7a5 (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - みなさん» お返事遅くなりまして、申し訳ございませんでした!記憶喪失になっても、本能で好きになってしまう的な話が書きたくて(/ω\*) (2020年1月13日 21時) (レス) id: 4a0ecf03f1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:わかめ | 作成日時:2019年10月27日 16時

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