星になんか願わない -Ａ

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「Aさんは１号のこと、どう思ってた？」

裕太は立て続けに質問をぶつけてくる。

さっきの店と同じように、私の飲むペースはどんどん早くなっていき、もう勢いで答えるしかなかった。

「玉森くんは一体、何が知りたいの？」

「わかんない
でも、Aさんのことが知りたい」

「それは何で？」

「わからないけど、知りたいって思うから」

だから、そんなに真っすぐな目をして私を見ないでよ。

昔の裕太はそんな感じじゃなかったじゃん。

今の裕太は、純粋過ぎて困る。








「１号のことは、ただの同僚としてしか思ってなかった？」

「…うん」

「１号のこと、嫌いだった？
好きだった？」

「普通」

「特に恋愛感情とかもなく？」

「何でそんなに恋愛感情を気にするかな」

なのに裕太は、怯みもせず更に畳みかけてくる。

「Aさんは、彼氏とかいる？」

その言葉を聞いた途端、私の胸はズキリと痛んだ。

…もう、どうでもいいや。

酔いも手伝って、私は自棄になっていたのかもしれない。







「いないよ」

「前はいた？」

まさか、当の裕太にそんなことを聞かれるなんて、夢にも思ってなかった。

あなたなんだけど、私の元カレは。

そう言えたら、どんなに楽なんだろう。

でも私は、この事実はずっと死ぬまで秘密にしていこうって決めたから、隠し通してあげる。

「…いた」

「何で別れたの？元カレと」









「何でそんなこと聞くの？」

「知りたいから」

「知りたいからって、何でも聞いていいわけじゃないんだよ」

「嫌だった？
答えたくない？」

答えたくないに決まってる。

しらふの時なら、絶対に答えてないと思う。

「いいけど
誰にも言わないって約束してくれる？」

「言わない
誰にも、絶対」

あんまり裕太が真剣な目をして身を乗り出してくるから、なんだか可笑しくなってきた。

今の２号の裕太は、１号の裕太の屈折とか去勢とか、全て削ぎ落したまっさらな状態なのかもしれない。









「別れた理由は、私に秘密を持ってたから」

「それだけ？」

「付き合った時に、「秘密は持たないでおこうね」って約束してたのに
それを破ったから」

「だから、Aさんは元カレを振っちゃったの？」

「振ってない
ケンカをしただけ
でもケンカの後、二度と会えなくなった」

裕太がその言葉に息をのむのがわかった。

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