星になんか願わない -Ａ

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「改めて聞くけど、もしかして何も覚えてない？」

その質問にあなたは、困ったように眉をひそめた。

その時に私達は初めて、裕太が記憶を失ってることに気付いたんだ。

それはもう…、一気に奈落の底に突き落とされたような感覚でなった、

この世が終わったかのような気持ちになった。

警戒心と恐怖心を含んだ目をしてこちらを見る様子に、私はその場に泣き崩れたけけど。

それすらも裕太は、気持ち悪いものを見るように眺めていた。

そのうち、ご家族が帰って来て、廊下で説明された内容は…、

・外傷は、右腕と肋骨、右足首の骨折
・頭は打っているが、脳にダメージは認められないとのこと
・事故当時はきちんと自分のことを理解していたけど、全ての処置が終わって眠って目が覚めてから、自分が誰なのかもわからなくなった
・解離性健忘というもので、事故前全ての記憶がないらしく、自分のことも両親のことも全くわからない

というもので、私にはよく理解できなかった。

要するに、裕太は記憶喪失になってるんだなってことだけはわかった。









その日の帰りは、どうやって部屋までたどりついたのか、よくわからない。

ただ、私の知ってる裕太はもういないんだということ。

この世に裕太そっくりの人間はいても、その人の中身は私の知ってる裕太ではないということ。

だけど、

『記憶が戻る可能性もあるらしい
それはすぐにかもしれないし、数年先かもしれない
一部だけかもしれないし、全部かもしれない』

横尾さんとご家族がそう話してたことを、不意に思い出した。

…大丈夫。

私は、絶対に諦めないから。

裕太が私のことを思い出してくれるまで、毎日のように病室に通ってやる。

もし記憶が戻らなかったとしても、改めて私に惚れ直させてやる。

そう誓った私は、翌日から仕事終わりに毎日のように病室に通ってた。

最初は気味悪そうに見られたり、お世話すら拒否されたりで、

病院からの帰りは、いつも泣きながら帰ってたっけ。

だけど徐々に心を許してくれるようになって、短い会話くらいはしてくれるようになった。

相変わらず、私を見る時は気味悪い物を見るような目をしてたけど。

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