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宴会場に戻ってきたら、横尾さんが廊下のベンチで待っていてくれていた。

「遅かったじゃん」

私を見るなり安堵の表情を見せた横尾さんは、そのまま私を手招きして隣に座らせる。

「もしかして玉森に会った?」

「何でわかるんですか?」

「なんとなく
お酌に来た時、なんとなくキョロキョロしてて、Aのことを探してたみたいだから」

「中庭で涼んでたら、来ました」

「なんか話した?」

「世間話的な話ですかね」

そう誤魔化したのには理由がある。

裕太がさっき打ち明けてくれた本音は、きっと誰にも知られたくないことなんだろうなって思ったから。









「実はさっき、飯塚にお前との関係をしつこく聞かれて」

「私と横尾さんのですか?」

「仲いいから付き合ってるのか、とか
きつく否定はしておいたけど、飯塚には言っといた方がいいんじゃない?
昔、Aと玉森が付き合ってたことは」

「…言わないです」

絶対に言わない。

もう決めたんだから。

彼女だったってことを記憶のない裕太に教えて、どうこうしようなんて考えられないから。

「飯塚、玉森のこと好きみたいだけど…
大丈夫?」

横尾さんにも言ったのかな、志穂ちゃんは。

こうやって、外堀をどんどん埋めていくんだね。









向こうから2人が歩いて来るのが見えて、私達は会話を止めた。

裕太は早足でこちらへ歩いてくると、軽く会釈してそのまま宴会場に入って行く。

その背中を見てるだけで、胸が痛んだ。

志穂ちゃんがそんな裕太の後をちょこちょこと可愛らしくついていくのを見ながら、今度はため息が漏れる。

「この間話してた、異動の話ですけど
締切っていつですか?」

「一応、締切はないけど
次の異動が9月だから、夏前には出しておいた方がいいとは思う」

やっぱり、異動した方がいいのかな。

多分、いやきっと、裕太と志穂ちゃんは付き合い始めると思う。

そうなった時に、私はどんな気持ちで過ごせばいいのか。

できれば、間近で見ていたくないんだ。

「やっぱり、辛い?」

そう聞かれて素直に頷いたら、横尾さんは難しい顔をして考え込んでしまった。









しばらくの沈黙のあと、

「もう言っちゃえば?玉森に
正直に、本当のこと」

横尾さんはそんなことを言い出した。

言えるもんなら、とっくに言ってるよ。

そんな簡単な問題じゃないんだって。

2019/06/02→←前ページ



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りたわかめ(プロフ) - くるりさん» まだ読んでいただいてたらありがたいです。地味に更新しました(/ω\) (2021年6月15日 22時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
くるり(プロフ) - キュンキュンしたり切なくなったりしながら読ませていただいてます!これからの展開がとても楽しみです。更新大変だと思いますが無理せず頑張ってください!応援してます! (2020年8月19日 9時) (レス) id: e6324db40e (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - ゆりかさん» こちらこそ読んでくださってありがとうございます!実は本当はもっと悲しい設定にする予定だったんですが、書いてるうちにこんな感じに仕上がってしまいましたwこれからもどうぞよろしくお願いします<(_ _)> (2020年3月17日 2時) (レス) id: 4a0ecf03f1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりか(プロフ) - いつもいつも楽しく読ませて頂いてます!前の記憶を覚えていないもどかしさであったり、悲しいところもあったり、キュンキュンしたり、本当に大好きなお話です!本当に面白いです!次回の更新も楽しみにしています(^^) (2020年3月9日 5時) (レス) id: 6a4601e7a5 (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - みなさん» お返事遅くなりまして、申し訳ございませんでした!記憶喪失になっても、本能で好きになってしまう的な話が書きたくて(/ω\*) (2020年1月13日 21時) (レス) id: 4a0ecf03f1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:わかめ | 作成日時:2019年10月27日 16時

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