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「そうなの?」

思わず、聞き返してしまった。

それも、まるで付き合ってた頃みたいな言い方で。

「俺が笑ってたら、みんなが安心するから
それならずっと笑っていようって思って」

そんな答えが返ってきて、胸が張り裂けるほど痛くなった。

本当の裕太はそんなんじゃないのに。

マイペースで気ままで、人にどう思われようが自分の楽なように進むタイプなのに。

「昔のことは、全然思い出せない?」

私が一番聞きたかったのは、これなのかもしれない。え

だからなのか、この質問をする時には緊張して声が震えた。

…裕太には、気付かれてないと思うけど。








「思い出せない
でも…、たまに懐かしいって思える場所があって」

いつもみたいに愛想いい裕太じゃなく、その言い方は昔の裕太のままだったから。

もう、さっきから胸が痛くて仕方ないんだ。

「どこ?」

「自分の住んでたマンション
今も同じマンションに住んでて、部屋は違うんだけど
外観や部屋の中に入った時に、なんか懐かしいって思えた」

「他には?」

「今のところ、まだない」

申し訳なさそうにそう答えられて、体中の力が一気に抜けた。

本当に、裕太は裕太じゃなくなったんだ。

私の知ってる裕太は、もう消滅してしまったんだろうな。








「聞いていい?」

急に裕太に声を掛けられて、我に返った。

「昔の俺って、どんなだった?」

彼の声は少し震えてて、緊張しているのが伝わってきたから、

きっとこれは、彼がずっと誰かに聞きたかった質問だったんだなってわかった。

気の利いたことを言ってあげればよかったのに、私は、

「どうしてそんなことを知りたいの?」

とか、残酷なことを聞いてしまった。

彼の眉間が少し辛そうに歪んだのが見えて、すぐにその質問を後悔してしまう。

「昔の裕太は、愛想なんて微塵もなかったよ
笑顔振りまいて場を和ませるとか、考えられないくらい」

なるべく平静を装って、正直に答えてみたら、意外にも裕太は食いついてきた。









「それで?」

好奇心に満ちた目で、そう催促されて。

つい、調子に乗ってしまう。

「毒舌だし、我儘だし
あまり人と深く付き合わない感じだったかな」

「もしかして嫌われてた?俺」

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りたわかめ(プロフ) - くるりさん» まだ読んでいただいてたらありがたいです。地味に更新しました(/ω\) (2021年6月15日 22時) (レス) id: 9f29bca2de (このIDを非表示/違反報告)
くるり(プロフ) - キュンキュンしたり切なくなったりしながら読ませていただいてます!これからの展開がとても楽しみです。更新大変だと思いますが無理せず頑張ってください!応援してます! (2020年8月19日 9時) (レス) id: e6324db40e (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - ゆりかさん» こちらこそ読んでくださってありがとうございます!実は本当はもっと悲しい設定にする予定だったんですが、書いてるうちにこんな感じに仕上がってしまいましたwこれからもどうぞよろしくお願いします<(_ _)> (2020年3月17日 2時) (レス) id: 4a0ecf03f1 (このIDを非表示/違反報告)
ゆりか(プロフ) - いつもいつも楽しく読ませて頂いてます!前の記憶を覚えていないもどかしさであったり、悲しいところもあったり、キュンキュンしたり、本当に大好きなお話です!本当に面白いです!次回の更新も楽しみにしています(^^) (2020年3月9日 5時) (レス) id: 6a4601e7a5 (このIDを非表示/違反報告)
りたわかめ(プロフ) - みなさん» お返事遅くなりまして、申し訳ございませんでした!記憶喪失になっても、本能で好きになってしまう的な話が書きたくて(/ω\*) (2020年1月13日 21時) (レス) id: 4a0ecf03f1 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:わかめ | 作成日時:2019年10月27日 16時

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