星になんか願わない -Ａ

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しばらく涼みながら、考える。

もうこうなったら、本気で異動届を提出しておこうかな。

何も悪いことしてないのに、何でこんなに辛い目に合わなきゃいけないんだろう。

「あの…」

いきなり背後から声をかけられて、大袈裟に体が揺れた。

振り返らなくてもわかる。

中身は別人でも、声は裕太のままだから。









何故か裕太は、自然に隣に腰掛けてきた。

そのくせ、無言のまま。

また、気まずい空気が私たちの間に流れる。

それに耐えられなくて立ち上がろうとしたら、

「あのさ…」

彼は、裕太と同じ声で、私を呼び止めた。

「なんか、ごめん
いろいろ」

彼はちっとも私を見ようともしないし、じっと地面を眺めている。

そういうところが、裕太とかぶってしまう。

この人は、もう裕太じゃないのに。

「いろいろって？」

「まず、あの時のこと、謝りたくて」









「病室でのこと
俺、ずいぶんひどいこと言ったから」

いきなりそんなことを謝られて、私はなんて答えていいのかわからなくなった。

なんて答えるのが正解なのかわからなくて、動揺を隠すみたいに目を伏せる。

「あの頃の俺、もういっぱいいっぱいで、余裕がなかったっていうか…
本当にごめん」

初めてかもしれない。

裕太からこんなに素直に謝られたのは。

付き合ってた頃の裕太は、冗談混じりで謝ることはあっても、こんな風に素直に謝って来たことはなかったから。

まあ、私達はケンカをすることも少なかったし、裕太が私に謝る機会もほぼなかったけど。

あの、ケンカしたまま別れたあの夜以外は。

「いいよ、そんなの
もう私も忘れてた」

平気なふりをして、そんなことを言ってみせた。

本当はあの日、ものすごい打撃を受けたくせに。









「本当に？」

彼はようやく視線をこちらに向けて、遠慮がちに私の表情を探ってくる。

ここが暗くてよかった。

本当は、心臓をぎゅーっと掴まれてるみたいに、苦しいのに。

「本当だよ
でも、元気になってよかったね」

さりげなく、話を逸らしてみたり。

視線も外してみたりするけど、私の胸の痛みは治まらない。

儚げな目をして、池の方へ視線を移した彼は、

「全然、元気じゃない
何も思い出せないし、実は毎日辛い
でも平気なふりして頑張ってる」

またこちらを向いて、柔らかく笑って見せた。

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